3月期決算企業の上場企業で、報酬が1億円以上の役員の氏名と金額の個別開示が、2011年6月末までにほぼ出そろった。昨年から義務づけられたこの個別開示で、トップは昨年に続いて日産自動車のカルロス・ゴーン社長。金額は前年比9100万増の9億8200万円だった。
6月30日現在で東京商工リサーチがまとめた速報値では、1億円プレーヤーの人数、企業数ともに昨年をやや上回り、2011年3月期の業績回復基調を示したが、業績が悪化した企業では1億円プレーヤーも減っていた。
1位日産ゴーン、2位はソニー・ストリンガー変わらず
東商リサーチによると、報酬1億円以上の役員を開示した企業は前年比2社増えて168社、人数は5人増の294人だった。このうち1億円プレーヤーが「2人以上」の会社は前年比10社増えて71社に上った。
また、2年連続で1億円以上の役員報酬を受け取ったのは179人。このうち、前年より報酬が増えたのは89人で、減ったのは71人、同額は19人だった。
金額の上位を見るとゴーン社長に続いてソニーのハワード・ストリンガー会長兼社長が8億8200万円(前年比6800万円増)で、著名外国人トップによる「ワンツー」は昨年と変わらなかった。ソニーは3年連続の最終(当期)赤字を記録しているうえに情報流出問題が発生したことから、ストリンガー氏の「基本給」と賞与の合計(現金による支払い部分)は3億4500万円で前年より6300万円減ったが、ストックオプション(自社株購入権)の評価額が前年より増えたため、全体では増額になったという。
最多は大塚HDの8人
他の上位を見ると昨年同様、創業一族の退任に伴うケースが目立つ。3位は大東建託の創業者で、6月28日に会長を退いた多田勝美氏で、8億2300万円と日本人ではトップ。4位は今年2月に死去した自動車用品メーカー、タカタの高田重一郎前会長で6億9500万円。5位はエース交易の榊原秀雄前会長の6億1800万円が続く。
「現役」の日本人では、里見治セガサミーホールディングス(HD)会長兼社長が6億1500万円で6位に入り、昨年の9位より順位を上げた。日本調剤の三津原博社長(5億7200万円)も7位で昨年(8位)よりランクアップ。エイベックス・グループHDの松浦勝人社長は報酬が昨年(2億4900万円)より6割超増えて4億800万円で10位に入った。
1億円プレーヤーを抱える人数では、大塚HDの8人が最多。日産の7人、ソニー、トヨタ自動車、ファナックの各6人が続いている。
業績の悪化は報酬にも直結しており、昨年1億円プレーヤーが6人いた任天堂は、最終利益が66%減となったことなどから岩田聡社長(1億3700万円)1人だけになった。やはり減収減益の野村HDも昨年の7人から5人に減った。
ただ、ソニーのように最終赤字でも報酬がしっかり出る企業も多く、今年は14社(昨年は15社)。こうした役員報酬のあり方には、株主から不満も出そうだ。