「東京電力は破たん処理すべき」――。そんな声が再び出ている。
自民党の河野太郎衆院議員は2011年7月7日付のブログに、「当初は財務省プラン(東電の補償金支援スキーム)でスタートするが、折を見て、東電を破たん処理させますという経産省プランを持って、経産官僚が議員会館を回り始めた」と書き、水面下で東電の破たん処理が動き始めたことを暴露した。
債務超過に陥るのは間違いない
もともと河野氏は東電の破たん処理には賛成している。政府による東電の補償金支援スキームは、「巨額の報酬を得ている東電の経営陣には責任をとらせず、株主は保護し、金融機関の責任も追及しないのに、全国レベルで国民には値上げした電力料金を負担させるというとんでもない利権保護策だ」と、息巻いている。
経営破たんとなれば、東電株は紙くずになる。現役の経済産業省の官僚で、政府の東電処理に批判的な古賀茂明氏も、講談社「現代ビジネス」の中で「100%減資が必要。株主責任を不問にするという判断は絶対にしてはならない」と、破たん処理に賛成している。
6月28日に開かれた東電の株主総会では、株価が300円を割り込んで、「年金生活には痛手だが、これまで何も主張してこなかった株主にも責任はある」と、「覚悟」を決めている株主もいないわけではない。
事実、東電の経営不安は拭えない。2010年3月期決算をなんとか凌いだものの、債務超過の可能性はなお高い。たとえば貸借対照表(単独)をみると、純資産は約1兆2000億円。廃炉が確実な福島原発を償却処分すると、原発設備や保管されている核燃料などで、純資産の半分程度を失うとみられる。これに補償金の支払いなどが上乗せされるのだから、ほぼ間違いなく債務超過に陥る。
東電債は被災者の補償金よりも優先される可能性も
河野太郎氏は「(議員会館を回るような)そんな回りくどい手法を使う必要は全くない。堂々と最初から破たん処理させるべき」と主張する。
一方、「綱渡り」の東電の資金繰りを、いま支えているのは日本政策投資銀行と大手銀行だ。しかし、それも今後「債権放棄」の可能性が高まれば、さすがに貸せなくなるだろう。
震災直後の、3月末の「2兆円融資」にしても、破たんしたら放棄せざるを得ないはずだ。当時、東電株は急落。「緊急事態」を理由に融資したとしても、何の担保があるわけではない。東電が破たんすれば、資金が回収できないばかりか、自らの株主から代表訴訟を起こされかねない。
さらには東電債も紙くず同然になる。ただ、東電債は電気事業法37条の規定で優先債権になっていて、一般債権よりも優先されるので、わずかだが戻ってくる可能性がないわけではない。
政府は今のところ「破たん処理は考えていない」としているが、投資家の不安は増している