九電社長「原子力アウトになるかも」 原発すべて止まりかねない「大ピンチ」

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   いわゆる「やらせメール問題」で批判が相次いでいる九州電力の真部利応(まなべ・としお)社長が、地元紙とのインタビューで「原子力はアウトになるかも知れない」と語っていた。

   九電は、東電や中電に比べて原子力関連の大きな不祥事がなかったのに加えて、発電量に原子力が占める割合も他社に比べて高い、いわば「原子力村の優等生」的存在。その優等生が初めて挫折を体験する形で、そのショックは計り知れないものがあったようだ。

九電側は「あり得ない」と否定していた

   玄海原発(佐賀県玄海町)2、3号機の再稼働への理解を求めるための「説明番組」に、原発を容認する意見を送るように求める「やらせメール」疑惑については、2011年6月下旬時点で、すでにネット上で指摘されていた。複数の新聞社も、その存在を九電に指摘していたが、九電側は「あり得ない」などと否定。7月4日に開かれた鹿児島県議会の特別委員会でも、原子力発電本部の中村明副本部長が「そのようなことを依頼したという事実はない」と、「事実無根」との立場を貫いてきた。

   この見解が覆ったのが、その2日後の7月6日だ。この日の午後、真部社長は玄海原発がある佐賀県の地元紙・佐賀新聞の企画「『九電に聞きたいこと』募ります」に寄せられた質問や意見に答える形で取材に応じていた。だが、その裏で事態は動いていた。

   15時過ぎ、衆院予算委員会で共産党の笠井亮衆院議員が「やらせメール」問題を指摘。菅直人首相や海江田万里経産相の前で、メールの文面を読み上げたのだ。

   それに対して、海江田氏は、

「九電がそういういうことをやっているとしたら、けしからん話、本当にけしからん話。それは、然るべき判断、然るべき処置をします、はい」

と、色をなして答弁。菅首相も、

「もしそういうやらせ的なことがあれば、大変けしからんこと。そういうことがないように、しっかりさせないといけない」

と続いた。

真部社長は週明けにも進退を表明する見通し

   この様子が真部社長の耳に入ったのが、その1時間後の16時過ぎ。社員からメモを渡されると10分ほどインタビューを中断したという。その後、事態が明らかになって、

「すぐにはないが、いずれはそういう問題になってくる」
「責任は免れない。原子力がアウトになるかもしれない」

などと自らの進退について触れたという。

   九電は、これまで「原発優等生」だった。例えば、過去に大きな原発をめぐる不祥事や事故もなく、05年の福岡西方沖地震の際には震度4を観測したが、特段の被害はなかった。3号機では、09年10月15日に国内の軽水炉としては初めてプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使ったプルサーマル発電にも踏み切った。

   震災後も、安全対策を強調。11年7月4日には、玄海町の岸本英雄町長から、再稼働への同意を取り付けたばかりだった。佐賀県の古川康知事も容認姿勢に転じており、停止中の原発の再稼働を全国で初めて実現する「一歩手前」の時点で起きた「やらせメール事件」だった。

   事態を知って約3時間半後の、19時半からおよそ2時間にわたって開いた会見で、真部社長は玄海原発の2、3号機を、電力需要がピークになる夏場に再稼働できるかどうかの見通しについて聞かれると、

「期待が持てるかというと、非常に難しくなったかもしれない」

と悲観的な見通しを示すしかなかった。

   真部社長は週明けにも進退を表明する見通しだが、このメール問題は、夏場の九州地区の電力需給にも大きな影を落としている。

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