2011年7月24日のアナログ放送終了・地上デジタル放送への完全移行を目前に控え、家電量販店では薄型テレビが飛ぶように売れている。だが、電機メーカー各社の表情はさえない。これまでテレビ販売を牽引してきた家電エコポイントや地デジ移行などの追い風が夏以降は完全になくなるためだ。
各社が新たな切り札として投入した3D(3次元)映像テレビも不発で、各社は「赤字体質のテレビ事業がますます追い込まれる」と、需要先食いのしっぺ返しに戦々恐々としている。
値崩れで利益がでない
調査会社のBCNによると、地デジ完全移行を前に、5~6月の薄型テレビ販売台数はいずれも前年同月比2倍前後と特需に沸いている。今年3月末まで実施された家電エコポイント制度もあって、薄型テレビの販売は好調が続いてきた。
だが、薄型テレビの価格下落は販売台数の増加で補いきれないほど急速に進んでいる。最も普及している32型は、ここ1年で4割近く値下がりし、量販店では3万円台で売られている。値崩れから「利益の出しようがない」(電機大手幹部)状態で、テレビ事業の赤字が長年の懸案となっているソニーは、2012年3月期の赤字脱却を早々と断念。パナソニックも6月20日の記者会見で「今期(2012年3月期)も黒字転換は難しい」と述べた。
さらに、7月24日以降は「需要急減が避けられない」(アナリスト)。各社は少しでも買い替え需要を喚起しようと、3Dテレビなど高機能機種を繰り出しているが、3Dテレビは別売りの専用メガネが「高すぎる」「重い」「充電が面倒」などと消費者の評判はいまひとつ。コンテンツも増えず、「鳴かず飛ばず」(別の電機大手幹部)の状態だ。