東日本大震災で被災した地域金融機関、なかでも宮古信用金庫や石巻信用金庫、気仙沼信用金庫、石巻商工信用組合などは半数以上の支店が被災して大きな被害を受けた。
そんな被災地の信金・信組でいま、預金が急増している。
遠くの地銀より近くの信金
信用金庫の系統機関である信金中央金庫地域・中小企業研究所によると、地震による津波の被害が大きかった三陸沿岸に本店を構える宮古、石巻、気仙沼の3信金の2011年4月以降の預金増加率は、いずれも10%を超える。
その原因は、被災者に火災保険や地震保険、生命保険などの保険金が入ってきたことが大きい。義援金もある。
その他に、「他行からの預け替えが進んだことがある」(主任研究員の高橋宏彰氏)とみている。地元には七十七銀行(宮城県)や岩手銀行、北日本銀行(岩手県)といった地方銀行が支店を構えるが、市内に数か店程度なので、避難所などから支店までの距離が遠い。
狭域高密着で店舗を展開する信金の場合、「歩いて行ける」利便性から、預金が引き出しやすい「近くの信金」への預け替えが進んでいるようだ。
気仙沼信金は、職員の3分の1が津波で自宅を流されるなど被災したにもかかわらず、地震のあった3月11日から土・日曜日をはさんだ14日から営業を順次再開した。被災者への預金の払い出しも面談で本人確認を行い、対応。「職員も地元。取引先も地元なので、顔がわかった」という。
「震災後すぐに、被災者が本人確認用の書類がなくても、県外の避難先で預金が払い出せるように全国の信金が協力してくれたことで、信頼度が増した」(気仙沼信金)と、対応の速さが高評価につながったとみている。