スマートフォン人気で回線大混雑 パケット定額制の継続は「悩ましい」?

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   スマートフォンの急速な普及で、トラフィック(データ通信量)も急激に増大している。携帯電話の回線が混雑し、負荷の高まりも深刻化してきた。

   携帯通信各社はスマートフォンの利用に、上限金額を設けてデータ通信を「使い放題」にできる「パケット定額制」を提供する。トラフィックが増える一方で料金は抑えられる形になり、各社にとっては悩ましいところだろう。

従来型携帯電話の24倍のトラフィック生む

スマートフォンやタブレットPC人気は衰えず
スマートフォンやタブレットPC人気は衰えず

   調査会社のコムスコア・ジャパンは2011年6月30日、国内のスマートフォン利用者が11年3月時点で976万人に達したとの調査結果を発表した。従来からのトレンドを加味すると、現時点では1000万人を超えているとしている。

   総務省では、モバイル機器によるトラフィックの爆発的な増加を懸念する。同省移動通信課が5月27日、都内で開かれた無線通信事業のイベント「ワイヤレスジャパン2011」で公表した資料によると、2010年9月時点で、移動通信によるトラフィックは四半期で13.2%増となり、年率換算で64%アップとなった。今後トラフィックを引っ張るのはネットブックやスマートフォンで、スマートフォンは従来型携帯電話の24倍のトラフィックを生みだすと指摘した。

   国内で米アップルの「アイフォーン(iPhone)」を契約する場合、ソフトバンクモバイルは定額制を採用している。ひとつはパケット数にかかわらず月額4410円、もうひとつは1029円からスタートしてパケット数に応じて課金され、上限4410円で頭打ちになる料金体系だ。これ以上は支払いが発生しないのだから、利用者はアイフォーンによるインターネットの接続や、動画のダウンロードなどで巨額の請求が来るという心配は必要ない。

   しかし事業者にとっては、スマートフォン人気が続けば回線への負荷も増えるのだから頭が痛い。対策を施さないと通信が滞ったり、ネットの利用に支障をきたしたりする恐れがある。だが定額制を維持する以上、トラフィックの増大と比例して事業者の収入が増えるわけではない。そのためか、米通信事業会社のAT&Tは2010年6月、パケット定額制を廃止して、一定水準を超えたデータ通信には従量課金制を取り入れた。この決定についてツイッター上で質問されたソフトバンクの孫正義社長は当時、「悩ましい問題。世界中の携帯事業会社の経営者の悩みです」と苦しい胸の内を吐露していた。

「無線LANスポット」増設で負荷減らす

   増大する回線への負荷を減らそうと通信各社が力を入れているのが、「無線LAN」サービスの拡充だ。外出先でも無線LANに接続できれば、利用者は3G(第3世代)回線よりも速い環境でネットに接続でき、事業者にとっては携帯電話回線の混雑解消につなげられる。

   KDDIは6月30日から、鉄道の駅や電車内、空港、地下街などで無線LANに接続できるサービスを開始した。スマートフォンに専用のアプリケーションを入れて起動させると、無線LANの電波が届いている場所にいれば自動的に3G接続から切り替わる。2012年3月末までに、全国10万スポットの開設を目指す。ソフトバンクモバイルも、5月1日から都営地下鉄全線の駅構内でのサービスをスタート。コーヒーチェーン「スターバックス」でも、無線LAN接続に対応する店舗を全国で増やしている。

    NTTドコモは無線LANスポットの増設に加えて、2010年12月に商用サービスをスタートした「LTE」と呼ばれる次世代高速通信の普及をにらむ。最速の状態では「光回線並み」になるという速度で、3Gより速いことから「3.9世代」と位置付けられている。現段階でカバーしている領域は首都圏をはじめ主要都市の中心部に限られており、対象機種もデータ通信用カードなどにとどまっているが、今後はLTE対応のスマートフォンも開発されるものとみられる。

   各社とも対応策を講じているものの、スマートフォンが圧倒的なスピードで広まりつつあるだけに息が抜けない状態だ。

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