小売り、外食、サービス業で「アフター4」をキーワードに需要獲得合戦が活発になっている。原発事故に伴う節電で、始業・終業時刻を繰り上げる「サマー タイム」を導入する企業などが増え、早めに退社する人たちの消費を取り込もうという狙いで、早朝の利用者を狙う「ビフォア8」商戦も含め、各社、知恵を絞っている。
東日本大震災後、直帰する人が増えたことなどで外食産業は苦戦しており、巻き返しに懸命だ。
夕刻の開店を1時間早い 午後4時に繰り上げ
飲食チェーン「プロント」は首都圏の146店舗で通常より1時間半程度早く店内の照明を落とし、夜向けメニューに切り替え、 午後4時~5時半限定の酒類と枝豆などの特別メニューを堪能する会社員らでにぎわう。
日本マクドナルドは、4月に始めた午前11時~午後2時限定の割安なランチセットを、6月から午後9時まで延長。早く帰宅する会社員などを引き寄せたい考えだ。
居酒屋チェーンを運営するコロワイドは系列の「ラ・パウザ」「北 海道」などの関東地方の全店舗で、夕刻の開店を1時間早い 午後4時(一部3時)に繰り上げた。8月31日までは、午後6時(一部7時半)までに来店した客に対し、お酒の一部を半額にしている。そのほかの 居酒屋チェーン、レストラン、その他の外食各社も、さまざまな特典を打ち出して集客にしのぎを削っている。
メーカーもこのチャンスを見逃さない。アサヒビールが東京・銀座に開く期間限定のバーは、氷点下に冷やしたビールを提供する店として話題だが、平日は午後4時から営業する。
百貨店では、日本橋高島屋(東京都中央区)が、午後4時以降にキャリア向け婦人服フロアで3万1500円以上お買い上げなら、着替えた服を無料で宅配するサービスを7月13日から始める。買った服に着替えてデートやディナーに行く女性に着目したサービスだ。
6時半までに入店すれば安いセットメニュー
大丸東京店(同)は7月13~19日、「寄り道ビューティー」と題し、夏に必須のUV(紫外線)ケアができるファンデーションやヘアアクセサリーを限定で販売。購入した商品に応じて、メークアップやヘアメークのサービスを提供する。
京王プラザホテル(東京都新宿区)は、平日午後3~8時に利用できるプールのフリーパス(1万6000円)を発売。9月4日までの期間中、何度でもOKだ。ホテルニューオータニ(東京都千代田区)は7月16日にオープンする屋外プールの利用料を、平日と祝日の午後3時以降については昨年までの料金の半額の6000円に下げた。
リーガロイヤルホテル(大阪市北区)もホテル内の 飲食5店舗で、6時半までに入店すればドリンク1杯と軽食で1500円のセットメニューを用意。東京ディズニー・リゾート(千葉県浦安市)は7月8日~8月31日の午後5時以降、ディズニーランドかディズニーシーに割安で入場できる「夏5パスポート」(3300円)を売り出した。
朝の開店時間を繰り上 げるチェーンが増える
外国語教室のベルリッツ・ジャパンは、夕方を有効活用したいビジネスマン向けに「夏の短期集中コース」のメニューを例年より充実させる。ロハス・インターナショナルは運営するヨガスタジオのうち首都圏8カ所で9月末まで平日午後5時開始のクラスを新設。「クラス中は電気を消して 節電に貢献します」。
一方、朝の「ビフォア8」需要を 狙った動きも活発。「プロント」は約80店で開店時間を午前7時から15~30分繰り上 げ、出社が早くなった客を狙う。オフィスが多い東京・神田などでは売り上げが2割伸びた という。日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)も朝食メニューを扱う店を全体の1割以上にあたる120店に増やした。モスフードサービスのハンバーガーチェーン「モスバーガー」も一部店舗の開店時間を午前7時、8時に早めている。
ベルリッツ・ジャパンは平日のオンライン英会話レッスンの開始時間を午前6時15分に繰り上げた。学習塾や予備校でも、河合塾が東京電力管内約20校で、夏期講習の開始時刻を例年より繰り上げて午前8時40分からにした。リソー教育も個別指導塾「トーマス」の全64校で7月下旬~8月末までの夏期講習を午前7時半開始に(例年より1時間半ほど繰り上げ)。日能研も首都圏の半分以上 の48校で7時から(同1時間20分繰り上げ)とする。
首都圏の鉄道も、東急が平日の始発列車を午前4時台に繰り上げ、小田急は午前5~7時に7本増発、早朝需要に備える。