次世代中型旅客機ボーイング787型機(B787)が2011年7月3日朝、日本に初めて飛来した。B787は、従来の中型機と比べて大幅に航続距離が伸びたほか、部品の35%以上が日本製の「準国産機」。開発が当初計画と比べて3年以上遅れたB787だが、航空会社にとっては目的地や運航計画の幅が広がるという利点がある。
今回の飛来は、日本国内の空港設備を問題なく利用できるか検証を行うことが目的。検証作業はB787を大量に世界で初めて購入する全日本空輸(ANA)と製造元の米ボーイング社が共同で行う。
約50%を炭素繊維複合材で構成
7月3日午前6時20分過ぎ、ANAのトリトンブルーの塗装が施されたテスト機が米シアトルから羽田空港のC滑走路に着陸した。
検証作業は7月10日まで行われ、羽田空港と伊丹、関空、岡山、広島、中部を結んでテスト飛行も行われる。
B787は、従来の中型機と比べて様々な点で性能が向上している。通常、航空機はアルミを中心とした素材でできているが、B787は約50%を炭素繊維複合材で構成。従来よりも「軽く、強い」機体になった。
米東海岸路線や欧州路線の直行便も可能
燃費が向上し、航続距離も伸びている。ボーイング777型機といった大型機でないと運航できなかった米東海岸路線や欧州路線の直行便にも投入可能だ。航空各社が期待を寄せているのがこの点で、需要がそう大きくない長距離路線などの掘り起こしに知恵を絞っている。
居住性も向上している。これまでは手で開け閉めしていた日よけが「電子カーテン」になるほか、機体が「軽く、強く」なったことから、窓の面積が1.2倍に大きくなった。さらに、従来の機種と比べて気圧や湿度を高くできるため、乗客の耳やのどが痛くなる可能性も低くなる。
ANAは11年8~9月に1号機の引き渡しを受け、9~10月に、まずは国内線への投入を目指す。日本航空(JAL)も、ANAから2~3か月遅れの10~12月に1号機を受領。12年4月には、新設する成田-ボストン線に投入する。
今回のフライトで羽田空港への着陸の操作を行った石井正之機長(56)は、
「着陸の時は、やることはいつもと一緒なので、結構冷静だった。だが、その後にこみ上げてくる感動があった」
と、感慨深げだった。