福島第1原発事故による、下水汚泥・焼却灰の放射線汚染問題。国は2011年6月16日、汚泥の埋め立て、およびセメントなどへの再利用に関して、基準となる放射線量を示した。しかし汚染された汚泥の引き受け先は、ほとんどないのが現状だ。
処理の見通しが立たないまま、増え続ける汚染汚泥。関東各地の自治体からは「あと2~3か月もすれば、施設は汚泥で一杯になってしまう」と悲鳴が上がっている。
17都道府県で放射性物質検出
下水汚泥からの放射性物質の検出例は、東日本を中心に17都道府県にも及ぶ。福島第1原発の事故で漏れた放射性物質が、雨水を通じて下水に流れ込んでいるためだ。現在ざっと1万トン。6月末の時点でも多くの下水処理場でまだ高濃度の放射性物質が検出されており、当面汚染汚泥は増え続けることが見込まれる。
汚泥は焼却され灰の状態で、セメントなどの原料として民間業者に売却されている。しかし汚染発覚以来、業者の大半は引き取りをストップ。やむなく自治体では浄水場などで、袋詰めにするなどして仮保管している。しかしスペースには限りがあり、増える一方の汚染汚泥に自治体は危機感を募らす。
国は6月16日、「他の原料と混ぜた状態で1キロあたり100ベクレル以下」ならセメント材料に利用できるとして購入再開を促したものの、業者側は独自に「焼却灰の状態で100~200ベクレル」という品質基準を打ち出しており、これを上回る焼却灰については処理の見通しが立っていない。
前橋市の下水処理場では6月15日時点で、焼却灰から1キロあたり2万1500ベクレルの放射性セシウムが検出されている。現在は施設内で保管しているが、このまま行けば3か月後には置き場がなくなる。千葉県でも県が管理する施設だけで焼却灰が3000トン近くにまで達しており、あと2~3か月で限界を迎える。神奈川県、栃木県のほか、さいたま市や前橋市などでもこれに近い状況だ。