夏本番を前に気温が連日30度を超え、電力需給が厳しくなって節電が意識させられる中で、家庭で一番気になる電気製品といえば「エアコン」だ。暑さで使わないわけにはいかないが、とにかく設定温度を高めにして節電に協力しようと人は多いはずだ。
家電メーカーなどはエアコンの設定温度を「28度」にしようと呼びかけているが、それにしても、なぜ「28度」なのだろうか。
熱中症を起こさないギリギリの温度
そもそも、エアコンの「28度」が一般に広がりはじめたのは、2005年夏。小泉内閣時に小池百合子環境相が打ち出した「クール・ビズ」がきっかけ。クール・ビズ自体は、温室効果ガスの削減を狙った「チーム・マイナス6%」の取り組みの一環だが、このときに冷房時のオフィスの室温を「28度」に設定することで、低炭素社会の実現に貢献しようと呼びかけた。
環境省はオフィスの室温を26.2度から28度に上げることで、最大290万トンのCO2を削減できると試算。これに、「地球環境保護」をアピールしたい企業などが賛同した。
さらに遡ること、第1次オイルショック前の1970(昭和45)年制定の建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管理法)と、1972(昭和47)年に定められた労働安全衛生法事務所衛生基準規則に、「室温28度」が記されている。
ビル管理法は事務所の広さなど、事務所衛生基準規則は窓がない空調管理の事務所などの適用に差はあるものの、「(クール・ビズ際に示された28度の)根拠になっています」(厚生労働省)と話している。
それが電力不足の今、「節電」のための目安となった。
エアコンの「節電」に詳しい、大手空調メーカーのダイキン工業・空調生産本部の香川早苗さんは、「28度」の理由をこう説明する。
「28度でも湿度80%では熱中症の警戒ゾーンです。それを考えると28度は、熱中症を起こさないギリギリの温度といえ、逆に、気流や湿度を工夫することで暑さをしのげる温度ともいえるのではないでしょうか」