あえて「風評に負けない」と打ち出さない
2010年暮れにスタートした通販サイト「福島フルーツストア」は、福島第1の事故の前と後で客層がすっかり変わってしまった。担当の出口武司氏によると、原発事故を境に、それまでの「お得意様」が一気に離れてしまったが、代わりに新規の顧客が付き、結果的には利用者が増えた。
福島フルーツストアでは、大々的に「風評に負けない」と打ち出さず、極力「通常営業」を心掛けた。「継続して購入してもらうには、『大変だから今買ってください』と強調するより、『これからも品質の高い商品を出します』というメッセージを伝えたかった」と、出口氏は明かす。新規の客は当初「福島応援」という意図が強かったようだが、商品に満足したようでその後も繰り返し購入する人が増え、6月以降も顧客数が伸びているという。
農産物を提供する生産者が自主的に放射性物質の検査をするケースも多く、そのうえで福島フルーツストアでは、安全面をすべてクリアした商品だけを出している。消費者の中には「放射能は問題ないか」と問い合わせてくる人もいたが、その際は安全基準を満たしたとの証明を見せ、それでも納得してもらえなければ、「苦渋の選択でしたが『かえってご迷惑になる』と販売をお断りしました」(出口氏)。
福島の農産物は、夏と秋が「本番」だ。福島フルーツストアでもナシやモモ、リンゴの販売が本格化する。「被災地応援ブーム」がやや一服した感もあるが、出口氏は「例えばツイッターなど、ネットを通じてきめ細かく正しい情報を公表し、農産物の安全性をアピールしていくよう努めたい」と話す。