「健全経営」のオマリー家が手放して以降の凋落
ドジャースは黒人初の大リーガーとして知られるジャッキー・ロビンソンを誕生させ、本拠地をニューヨークのブルックリンから気候のいい現在のロサンゼルスに移すなど、将来を見据えての経営を絶えず考えていた。父子で50年近く所有することになるオマリー家が経営に携わってからは「大リーグで最も健全経営の球団」といわれたほどクリーンで家族的な品のいいチームだった。日本人大リーガーを加速させた野茂英雄が契約したのは息子のピーター・オマリー・オーナーの時代、1995年のこと。
1998年、オマリーは金がかかりすぎる球界に見切りをつけた。「メディア王」ルパート・マードックに売却、多額の利益を手にした。マードックは球団経営を「無茶苦茶にした」ことで地元から非難を浴び、ドジャー・スタジアムからファンの足が遠のいた。そして今回のマッコート事件となった。
現在、ワシントンを本拠とするナショナルズの前身は、カナダのモントリオール・エキスポズである。エキスポズも経営破綻し、コミッショナー預かりの末に行き場所が決まった。日本では「私鉄の雄」といわれた近鉄バファローズが経営に行き詰まり、オリックスと合併の形をとった後、新規参入として楽天イーグルスが決まった。
「球団経営は実業家にとって最高のステータス。しかし、球団は金食い虫の典型」
こんなかつての経営者たちの言葉がよみがえってくる。日本のプロ野球もそういう実業家が生まれては消えた。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)