焼酎といえば、米や麦、そして芋があるが、最近はその原料に注目が集まっている。背景には2011年7月1日に全面施行された「米(コメ)トレーサビリティ法」がある。原料に米麹などを使用する焼酎は、瓶などのラベルに原産国の表示が義務付けられる。
あまり知られていないが、芋焼酎は製造過程で米麹が使われていることが大半。そうした中で米麹を使わず、「芋」にこだわり、「芋」だけでつくる「全量芋焼酎」という焼酎のカテゴリーがある。
国内産米への切り替え始まる
「米トレーサビリティ法」は、2008年9月に発覚した「事故米」の不正流通問題をきっかけに定められた法律で、米そのものだけでなく、米を原料にした加工食品(味噌などの一部を除く)についても原産国の表示をメーカーに義務付けた。
米麹を使用する本格焼酎も例外ではない。たとえば、芋焼酎はタイ米などで麹をつくっているケースが少なくないが、こうした米麹を使った芋焼酎も原産国の表示が求められることになる。
酒文化研究所の山田聡昭氏は、
「米の産地が表示されれば、消費者はおのずとそこに目を向けるようになります。消費者の国内産へのこだわりや、最近の地産地消や産地のブランド化もあって、芋焼酎も国内産米への切り替えなど、業界の対応が進むでしょう」
とみている。
実際に、芋焼酎メーカーの対応は分かれている。これまで通り外国産米の米麹を使い続けるメーカー、国産米の米麹に切り替えるメーカー、さらには原料に米を使わない「芋」だけの「全量芋焼酎」を前面に押し出すメーカーだ。
米麹は使わず「芋麹」を使う
ところで、全量芋焼酎は米を一切使っていない。米麹を使わず、「芋麹」を使って醸造する手法で、前出の山田氏は、
「発酵や仕込みの技術が進み、芋焼酎にあった独特の臭みが消えて華やかな香りの、すっきりとした味わいに仕上げることが可能になりました。スタイリッシュというか、水割りやロックでもおいしく飲めます」
という。
これまでは芋麹でつくられている芋焼酎があることもあまり知られていなかったが、それは良質な芋麹づくりが難しかったためで、「ほとんど商品化されていなかった」(山田氏)と明かす。
酒文化研究所が酒類に関心の高い男女に聞いたアンケート調査(有効回答数339人)によると、全量芋焼酎を飲んだことがある人は23.5%、認知度は54.7%だった。山田氏は
「純米酒のように、シンプルでピュアな商品は消費者にわかりやすく支持される傾向にあります。原料芋100%にこだわった『全量芋焼酎』も着々とファンを増やしていくのではないでしょうか」
とみている。