電力不足に伴い「節電」が叫ばれるなかで、「ガス」を使った家庭用燃料電池型コージェネレーション(熱電併給)システム「エネファーム」への注目度が増している。
エネファームは水素と酸素(空気)の化学反応で電気をつくる仕組みで、家庭で使う照明や家電製品の電気と、キッチンや風呂などで使うお湯をつくり出すシステム。家庭でできるCO2削減策としても注目されている。矢野経済研究所の家庭用エネルギー機器市場に関する調査によると、2011年の市場規模は1万台と予測している。
市場規模は11年に1万台
エネファームが好調な背景には、住宅販売メーカーが「節電」住宅の販売に力を入れていることがある。エネファームの導入が、新築住宅の購入やリフォームを検討している人を中心に進んでいることもあるが、最近はこれも東日本大震災後に注目が高まっている太陽光発電との「W(ダブル)発電」が格好のPR材料になっている。
太陽光発電にエネファームを組み合わせることで、「売電」効果が高まることがメリットで、その両方をリフォーム時などに設置することを勧めている。
エネファームは導入価格が約300万円と安くないが、いまなら国による民生用燃料電池導入支援事業の補助金(1台あたり105万円)が利用できることも後押しする。
東京ガスは2009年度の販売実績が2100台、10年度は3900台と伸ばした。「震災直後は問い合わせ件数もかなりあった」というが、それも落ち着いてきた。とはいえ、11年度はこれまでに約2000台を販売した(いずれも、契約ベース)。
大阪ガスは09年度が1400台、10年度は2350台。11年度は750台と、順調に滑り出した。問い合わせ件数は増えていて、「コージェネシステム全体で、前年の2倍以上になります」という。11年度の目標は3000台を目指す。
環境意識の高い人が「長い目」で購入
エネファームなどのガスコージェネレーションシステムは、停電時に使用できない弱点がある。電気事業法の関係や、再起動するためには外部電源が必要な仕組みのためで、停電時に使えるようにするには「設計を見直す必要がある」(ガス業界の関係者)という。
しかし、それも販売への影響は軽微のようで、前出の業界関係者は「停電時に利用できない点を気にする人がいないわけではありませんが、それを理由に設置しない人はいません。節電効果もありますが、CO2削減であるとか、環境意識の高い人が長い目でみて、設置を決めているようです」と話す。