海外では「7不思議」の方が知られている
2007年、世界文化遺産に登録された石見銀山(島根県)は、翌08年に観光客が倍増した。遺産の保護のために自家用車や大型観光バスの乗り入れを禁止して、交通機関を路線バスのみとしたが、観光客にとっては待ち時間が長く、地元住民はバスが混雑して利用できないといった不便が生じた。結局は路線バスの乗り入れも止め、徒歩のみを許可することになった。
観光客が増えれば、マナー違反も出てくる。ゴミのポイ捨てといった迷惑行為が住民を悩ませた。さらに時間の経過とともにブームも落ち着き、09、10年と2年続けて観光客数は減少、世界遺産登録前と同程度の水準に戻ってしまったという。急激な観光化への対応は、簡単ではないようだ。
また海外では「世界遺産ブランド」が、国内ほど効果的なアピール材料になるかも微妙だ。あるテレビ番組で外国人数人に世界遺産について聞いたところ、「知らない」「世界遺産だからそこに行く、ということはない」との意見が出た。むしろ海外では「世界7不思議」の方が有名との声もある。
「7不思議」はもともと、エジプトのピラミッドをはじめとする古代の建造物を指していた。この「現代版」を世界で選ぼうと、スイスの財団が2007年にインターネットや電話による「新7不思議」の投票を呼びかけたのだ。財団によると投票に参加したのは1億人に上り、中国の万里の長城やペルーのマチュ・ピチュ、イタリアのコロッセオなど7つの文化遺産が選ばれた。11年には、今度は「自然遺産」を選ぶため、世界28か所の候補地を挙げ、ネット投票を進めている。この中には、日本からのエントリーは見当たらない。