世界遺産「次」を目指す候補地 急な観光化のマイナス面が心配

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   小笠原諸島と、岩手県平泉の文化遺産がユネスコの「世界遺産」に選ばれた。震災や原発事故で厳しい状況が続く国内では、久々に明るいニュースとなった。

   今回の登録で、国内の他の候補地は「次は我々だ」と勢いづく。だが、観光化と遺産保護のバランスで、かじ取りの難しさを体感している世界遺産もあるようだ。

「暫定リスト」に富士山、鎌倉、富岡製糸場

小笠原諸島は国内4件目の世界自然遺産(小笠原村観光協会のサイトより)
小笠原諸島は国内4件目の世界自然遺産(小笠原村観光協会のサイトより)

   世界自然遺産に選ばれた小笠原諸島は、2005年の知床(北海道)に続き国内で4番目となる。一方の平泉は、世界文化遺産として国内12番目の登録となった。特に平泉は、08年に申請をしたものの世界遺産委員会で「登録延期」が決議され、今回2度目の「挑戦」だった。岩手県は東日本大震災の被災地でもある。地元の喜びもひとしおだ。

   世界遺産登録のためには、最初のステップとして国が作成する「暫定リスト」に載らなければならない。現在リストにあるのは、鎌倉や富士山、国立西洋美術館本館(東京都)など12件で、すべて文化遺産となっている。

   1992年にリストに掲載された鎌倉は、2004年の中間報告書で「武家の古都・鎌倉」として「武家による独自の都市構造、武家社会、文化」という点をアピールすることを決定した。鶴岡八幡宮や円覚寺、鎌倉大仏といった寺院や神社、歴史的な建造物が含まれる。鎌倉市に隣接する逗子市や横浜市、神奈川県とも協力して、ユネスコへの推薦を待つ。

   富岡製糸場(群馬県)は07年、暫定リストに掲載された。明治時代初期に建てられた「木骨レンガ造」が当時の状態をほぼ保ったまま現存しているのは、世界でもあまり例がないという。海外でも製鉄所などの「産業遺産」が登録されている点を挙げ、建築物としての価値を強調する。

   世界遺産は、武力紛争や開発により消滅、破損する危険のある貴重な歴史的遺産や自然を守ろうとの趣旨から始まった。保全に力点をおいて、観光開発を制限したり、観光客の立ち入りを禁止したりする登録地もある。だが一方では、登録を機に観光客を増やし、地域の活性化につなげようとの動きが出るのも事実だ。

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