東日本大震災で天井の一部が落下し3か月間休館していた日本科学未来館(東京都江東区)が「膜天井」を導入した。地震で落下しても安全だという。どんな天井なのか。
科学未来館と、共同研究した東京大学生産技術研究所が2011年6月27日、同館で説明会を開いた。膜天井は、従来の石こうボードの代わりにグラスファイバー製の「膜」に樹脂を塗ったものを使っている。
落下しても「ふわり」と
一般的な石こうボードは、1平方メートルあたり約16キロあるが、膜天井の膜は同0.38キログラム。この軽さのために地震による揺れの影響を受けにくく落下する可能性が減るし、仮に落ちても「ふわり」とゆっくり落ちるため安全性が高いという。
もっとも、膜天井は技術的には以前からある手法で、2003年の十勝沖地震の被害後、北海道のたんちょう釧路空港が導入している例などがある。石こうボード方式に比べ2倍近くと割高なためまだ普及していない膜天井について、科学未来館では、安全性を重視する立場から「広く紹介したい」との思いもあるようだ。
今回、膜天井を採用したのはエントランスホールの吹き抜け天井部分(高さ28メートル)だ。大震災で落下したのは、同ホール天井535平方メートルの「約1割」でけが人などは出なかった。復旧の早さと工費の安さだけを考えれば、補修程度で済ませる選択肢もあった。
今後の天井対策に広がりをみせるか
しかし、安全重視に加え、膜天井の良さの情報発信の意味も込め、あえて今回の対応を取った。ほかの公共施設などへの普及が進む契機となれば、ということらしい。
国土交通省住宅局によると、今回の大震災を受け、従来の天井の耐震性にかかわる「技術的助言」を見直す必要があるのかどうかを含め、現在「実態を調査中」だ。膜天井についてきいてみると、現段階では特に注目されている、ということではないようだ。財団法人の日本建築防災協会(東京都港区)も、同省と同様の反応だった。
3月の大震災では、天井落下による死傷者も出た。建物自体は倒壊しないものの天井が崩れ落ちた例は多く、落下の様子を映した動画がインターネット上で公開され注目を集めた施設もあった。前出の未来科学館もそのひとつだ。同館の「膜天井」に関する取り組みは、今後広がりをみせるのだろうか。同館は6月11日から再開している。