全国的に人気が高い「茶のしずく石鹸(せっけん)」を使っている人が、パンなどを食べて運動した後に小麦アレルギーの症状を起こしたとして、製造販売業者の悠香 (福岡県大野城市)が5月から自主回収に乗り出している。小麦を含んだ食品を摂取するなどした後に運動すると起きる「運動誘発性アレルギー」とみられ、厚生労働省などは注意を呼びかけている。他のせっけんは大丈夫なのだろうか。
「茶のしずく石鹸」は悠香が通信販売。真矢みきさんを起用したテレビCMでもおなじみだ。2005年の発売以来、これまでに4500万個以上を売り上げたというベストセラー商品。厚生労働省によると、昨年10月以降、「茶のしずく石鹸」を使っていた67人が小麦を含んだ食品を食べて運動した後、じんましんや息苦しさなどを訴え、中には、救急搬送されたケースもあったという。
「食事+運動」で発症
関係者による と、30代の女性は、茶のしずく石鹸を使う前は花粉などのアレルギー症状はなかったが、使い始めてから約2年たったころ、鼻水が止まらなくなり、ある日、ピザなどを食べた後に外出したところ、呼吸ができないほど息苦しくなって、重い急性アレルギー反応が出た。こうしたケースが全国の医療機関 に報告されたという。
運動誘発性アレルギーは、食事をしただけ、運動をしただけでは発症しない。食事をした後に運動したという場合に起きるのが特徴だ。パンやパスタなどの小麦製品が原因になるケースが多いというが、発生する確率は非常に低いとされている。運動した場合に症状が出るのは、体を激しく動かすと小麦のタンパク質が不十分な消化のまま体に吸収されやすくなり、体が危険なものととらえて免疫機能が働いてしまうからではないか、とみられている。
他の石鹸などにも同じ成分
「茶のしずく石鹸」は、昨年12月7日以前に販売されていた商品に、小麦を加水分解した成分(小麦加水分解物)が配合されていた。小麦加水分解物は 保湿や泡立ちをよくする作用があるという。因果関係が解明されたわけではないが、このせっけんを長期間使用したことで、目や鼻の粘膜などに小麦加水分解物が付着し続け、アレルギー症状を引き起こすきっかけになった可能性があるとされる。
現在、悠香が販売している「茶のしずく石鹸」には、小麦加水分解物は配合されていない。一方、市場に出回っているさまざまなメーカーの乳液や洗顔フォームなどには小麦加水分解物が使用されている商品が少なくない。ネット上では「他のせっけんは大丈夫なのか」という不安の声も出ているが、厚生省によると、「茶のしずく石鹸」以外にはアレルギー症例の報告はないという。アレルギーがこの商品に特有のものか、爆発的に売れた商品で使用頻度や人数が多かったことによるものか、などはわかっていない。