中東のオマーンから被災地に届いた支援に対し、「ありがとう、オマーン!!」とネットで感動が広がっている。福島県南相馬市の金属製品製造業「落合工機」に700台の浄水器と14台の大型浄水器、総額26億円の発注が来たからだ。しかも完成した浄水器は日本の被災地で使い、その後オマーンに届ければいいという契約だ。
これだけの数の浄水器を作るには南相馬市だけで20社近い会社の力を借りることになるため、南相馬市全体の経済復興が期待できる。浄水器は現在、2台完成し、断水で困っている岩手県花巻市などで使われている。
浄水器は被災地で使った後にオマーンに
従業員数が16人の落合工機は2010年12月にNGOのJ-ACTION、日本錬水と組み中東への浄水器開発・販売事業を開始。オマーン、UAEから浄水器の受注を始めていたが、11年3月11日の大震災と原発事故の影響で工場は稼働停止になってしまった。
途方に暮れていたところへ、3月下旬にオマーンの王族系企業から改めて浄水器の発注があった。その数は浄水器700台と大型浄水器14台の総額26億円。落合工機の齊藤秀美社長によれば、この発注は大震災で苦しむ日本の被災地を支援したいという思いが背景にあり、しかも、完成した浄水器は被災地で使った後にオマーンに運んで欲しい、という申し出があったのだという。
「これから会社をどうするか悩んでいた時期で、オマーンからの受注を聞いて、これで体を動かせる、製品を作ることができる、嬉しさがこみ上げてきた」
と齊藤社長は打ち明ける。
花巻市の断水地域で一台が活躍
もちろんこの大量受注は同社一社では応じきれないため、南相馬市内だけで20社近く、市周辺の被災地にある会社を含めると数十社がからむ大仕事になり、被災地の経済復興にも一役買うことになるという。
ただ、工場は本格稼働していない。ポンプとフィルターといった部品を海外から輸入するのだが、それがまだ届いていないことが原因だ。
「海外の部品待ちで、私達としては早く製造に入りたいとうずうずしている状態です」
それでも2台の浄水器は完成、被災地に送られている。1台は岩手県花巻市。震災で陸の孤島になってしまい断水が続いている地域だ。住民は沢の水を使って生活しているが、飲料水としては使えなかった。この沢の水をオマーンから発注された浄水器で浄化、飲料水を住民に提供している。