コメの将来の価格を予想して取引する「コメ先物」取引が1939年以来、72年ぶりに上場される。コメ先物は、東京穀物商品取引所(東穀取)と関西商品取引所(関西商取)が2011年3月8日に農林水産省に試験上場を申請し、「復活」を目指していた。
民主党の農林水産部門会議は6月22日に試験上場を了承。鹿野道彦農水相も24日の閣議後の記者会見で「認可をしないというような考え方に立つということは、なかなか難しい」と、前向きに判断する考えを明らかにした。農水省は遅くとも7月25日までに認める。
コメ農家の損失を回避できる
試験上場が認められると、2年間にわたりコメ市場と生産、流通への影響を検証する。先物取引の対象となるのは、東穀取が「関東産コシヒカリ」、関西商取が「北陸産コシヒカリ」。すでに両取引所は、コメ流通業者や商社など50を超える業者から取引参加の意向を取り付けている。
コメ先物は、農家にとってはコメの価格安定や需給調整に役立つという。たとえば、コメ農家が作付け前にコメの販売価格を確定でき、収穫時に実際の価格が下落した場合でも、損失を回避できる利点がある。
現行のコメの価格は、生産者と卸売業者や流通業者らが相対で決めている。農協などが価格形成に大きな影響力をもっているとされ、そのため消費者からはわかりづらくなっていた。
今回、コメ先物の試験上場が認められる背景には、減反政策からの転換がある。コメの価格が下がっても、農家に直接交付金を支払う戸別所得補償制度が導入されたことで、「市場の価格変動を、許容できるようになった」(東穀取)という。
コメ先物は需給関係によって価格が決まるので、コメの新たな指標になる。それによって、消費者にも価格形成のようすがわかりやすくなる利点もある。
取引所の期待大きく
東穀取と関西商取は2005年にもコメ先物の試験上場を申請していたが、このときは全国農業協同組合中央会(JA全中)が「投機の対象になる」など、コメ相場の乱高下を懸念して反対していた。
もちろん、最近のトウモロコシやコーヒーの価格急騰を見れば、そういった懸念がないとはいえないが、東穀取と関西商取は建玉制限や値幅制限、サーキットブレーカー(取引量制限)といった異常な価格変動を防止する機能や市場への監視機能など、「公正で透明性の高い市場運営の機能を整えています」と口を揃える。
そもそも、コメ先物は江戸時代の大阪・堂島で誕生し、戦後の経済統制が行われるまでの約200年続いた穀物・商品取引のルーツ。取引所の思い入れは強い。最近は海外の穀物市場の活況が連日のように伝えられるが、日本では取引が停滞ぎみ。「コメは日本人の主食。なじみがあるので、取引が全体の活性化につながれば」(東穀取)と、取引所も期待しているようだ。