北朝鮮国内から攻撃が行われることはない
08年に脱北したジャン・セユル氏によると、「海外派遣組」のハッカーは、「プログラマー」として中国、ロシア、ヨーロッパに送り込まれる。ハッカー自身は、現地で、外貨稼ぎができる民間向けのソフトを開発しようという意欲を持っているものの、実際のミッションは現地を攻撃するためのプログラムの開発だ。例えば、ヨーロッパに派遣された人であれば、NATO諸国を攻撃することが想定されている。
海外に送り込まれるハッカーは計600人で、300人のチームが2つある。1~2年に1回、北朝鮮と派遣先をローテーションするという、しかし、攻撃経路が容易に特定されてしまうため、北朝鮮国内から攻撃が行われることはないという。
では、なぜ北朝鮮は、こんなにハッカーの育成に力を入れるのか。前出のキム氏は、(1)戦車や戦闘機を買うよりも、はるかに低コストで攻撃を仕掛けられる(2)北朝鮮には数学に優れた人材が多く、ソフト開発やパスワード破りの技術に自信がある(3)ハッカーの技術は、様々な分野で応用がきく(4)北朝鮮はインターネットとつながっていないに等しいので、攻撃を受ける側にならずにすむ、といった理由を挙げている。
ジャン氏によると、金正日総書記は、「サイバー戦争」の準備には相当の投資を行い、費用対効果は高いとみているようだ。