関西私鉄5社とJR西が「間引き運転」 運行ダイヤ巡りマスコミ異様な過熱報道

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   関西電力が2011年の夏に電力不足に陥るとして、一律15%の節電を要請したことを受け、「私鉄王国」の関西私鉄5社とJR西日本が「間引き運転」をめぐり情報合戦を繰り広げている。新聞各紙は連日、1面で各社の運行ダイヤ見直しを事細かに報じ、テレビも参戦して報道合戦はエスカレート。首都圏では考えられない異様な光景だ。

   在阪のマスコミ関係者は「私鉄やJRの運行本数が減るとすれば、生活情報として欠かせ ない」と説明するが、関西は首都圏に比べてJRと私鉄間の競争が激しいことが、異様とも思える過熱報道の根底にあるようだ。

「言った」「言わない」など混乱ぶりを逐一報道

   私鉄とJR西の間引き運転をめぐるマスコミ報道は、関電が15%の節電要請をした6月10日直後から始まった。きっかけは関電が近畿日本鉄道と阪急電鉄に「節電は15%でなく、10%でよいと伝えた」などとする報道だ。関電は企業 や家庭などに「一律15%」の節電を要請したが、自治体や経済界の反発が 大きいことから、「鉄道会社、病院などには一律15%の節電を求めない」と朝令暮改的に軌道修正した直後だっただけに、「節電を10%に緩和」の報道はインパクトがあった。

   しかし、京阪電気鉄道や南海電気鉄道は「関電から10%でよいとは聞いていない」などと反発。マスコミが私鉄各社を取材し、「言った」「言わない」などと、混乱ぶりを逐一報道した。結果的に関電が10%という具体的な緩和目標を示した事実はなく、電鉄会社との個別の交渉の中で、電鉄サイドが 「10%節電でなんとかならないか」などと持ちかけた数字が独り歩きしたようだ。

   節電が必要であれば、朝夕のラッシュ時を除き、電力需要のピークとなる昼過ぎの時間帯を中心に電車の運転本数を削減する――。ただこれだけのことに、 鉄道会社やマスコミが熱くなるのはどうしてなのか。間引き運転とは、平日午後が休日ダイヤになるようなもので、電車がゼロになるわけでは もちろんない。

   首都圏では東京電力の原発事故直後の計画停電で、JR東日本や大手私鉄が実際に運休に追い込まれたが、 関西のような過熱報道はなかった。

   関西の鉄道関係者によると、関西の鉄道会社が間引き運転などダイヤの変更に神経質になるのは理由がある。「JRと私鉄間の競争が、関西は首都圏とは比べものにならないほど激しいからだ」という。関西の私鉄は阪神電気鉄道だけでなく、かつては阪急や南海、近鉄もプロ野球の球団を保有していたことからもわかるように、一定のステータスとともに、沿線の宅地開発や百貨店、スポーツ・文化にいたるまで、幅広い事業を手掛け、お互いに切磋琢磨してきた。現在もその競争原理は色濃く残っている。

顧客獲得のため、各社のスピード競争が激しい

   関西の鉄道網 は首都圏よりもライバル会社へ乗り換えがしやすく、複数の鉄道会社に乗り入れる電車も多い。このため顧客獲得のため、スピード競争も激しい。2005年4月のJR福知山線の脱線事故も、私鉄とのスピード競争に打ち勝とうとしたJR西の焦りが背景にあったとされる。

   このため、今回の節電に伴う間引き運転も、JR西や関西私鉄5社にとっては、節電の実効性もさることながら、顧客の獲得競争なのだという。各社とも最終的には間引き運転に踏み切らざるを得ないとみられるが、南海電鉄のように「ダイヤに手をつけるのは最終手段」と慎重姿勢を崩さないところもある。最近では私鉄各社が個別に節電ダイヤに切り換えると混乱しかねないとして、学校が夏休みとなる11年7月20日前後に「各社一斉」に節電ダイヤにシフトしてはどうか――などとする案も取り沙汰されている。

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