「人の噂も75日」とばかりに国会の70日延長、すなわち事実上、菅政権の当面の「延命」が決まった。民主党内では、菅首相が退陣論をものともせず、「自然エネルギー」「脱原発」を軸にさらなる延命を図るつもりでは、と戦々恐々とした空気も流れている。
菅首相は、「自然エネルギー」をキーワードに孫正義・ソフトバンク社長と急速に蜜月ぶりを見せ始めている。自然エネルギーの全量買い取りを義務付ける法案は、菅首相が急きょ「最重要」案件として掲げ、菅首相が退陣しないことを正当化する「錦の御旗」として急浮上した。菅首相の当面の「命綱」のひとつとも言えそうだ。
「その粘りで法案通して」とエール
菅首相が同法案への意気込みを強くアピールしたのは、2011年6月15日の会合でのことだ。菅首相の顔を見たくない、という人が国会に結構いるとして、「見たくないならこの法案を早く通した方がいい」と「菅降ろし」勢力を皮肉ってみせた。
会合で菅首相のこの発言を引き出したのは、自然エネルギー推進派の孫社長だ。「あと10年は(首相を)続けて」「その粘りで法案を通してほしい」とエールを送ったのだ。
これを受けた形で菅首相はマイクを握り、孫社長の話を聞きながら戦略を考えた、として例の「顔見たくないなら」発言をした。孫社長のエールに気をよくしてか、菅首相は
「本当に(私の顔を)見たくないのか。本当に見たくないのか。本当に見たくないのか」
と笑顔で3度も繰り返すなどノリノリの演説をみせ、発言の後には右拳を上へ突き上げるパフォーマンスも披露した。
従来の「首相退陣条件」は、第2次補正予算案と特例公債法案の可決を想定し、民主執行部と自民・公明幹部が話を詰めていたが、菅首相は、再生可能(自然)エネルギー特別措置法案も加えるようゴリ押しを始めた。