「第4列の男」リーダーにふさわしくない
これだけ、政権の最優先課題を次々と掲げてやらないと、いくら忘れやすい国民もまたかと思ってしまう。官僚もどうせまた口だけでやらないと思って、手抜きをするだろう。
「電力買取法案」は今回の原発対応で出てきたわけではない。3月11日の震災当日、まさに震災の直前に閣議決定されていたものだ。
さらに、その経緯はかつて世界一だった太陽光発電分野でドイツに抜かれたことだった。ドイツでは固定価格買取制度によって急速に普及が進んだので、麻生内閣で「余剰電力買取り制度」が導入され、その延長線上で今回の法案になっている。
しかし、菅政権はまったくやる気がなかった。閣議決定後、4月5日に国会に提出されたが、趣旨説明すら行われていない。菅政権は国会を開いていると世間から批判されるとして、6月22日に国会を閉じて夏以降に補正予算を先送りする考えすら持っていた。そのときには、「電力買取法案」はまったく蚊帳の外だった。
なお、震災前には原子力輸出に熱心で、そのための法案は早く国会に出して審議して既に成立している。
菅首相は学生時代に学生運動に熱心だった。ところが、機動隊とぶつかる場面ではいつも「第4列」にいた。そこは検挙される可能性がほとんどないからだ。そのうち演説はうまいが、実行段階では体を張らない「第4列の男」と呼ばれるようになった。
口だけで先頭に立たない「第4列の男」はリーダーにふさわしくない。延命のために、実行しない政権の最優先課題を連発してほしくない。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。