菅内閣になって、政権の最優先課題はコロコロと変わってきた。
政権発足間もない2010年の参議院選挙の頃は、「消費税10%」、直後の8月にあった民主党代表選では、「雇用を起点とした成長戦略」、9月に入ると「TPP」。これは11月のAPEC向けとしか思えないポーズだった。2011年1月になると、自民党時代に政策運営で対峙していた与謝野馨氏を入閣させ、「税と社会保障一体改革」を最優先とした。与謝野氏の節操のなさも問題だが、この人事では与党内からも『よそのさん』と揶揄された。
消費税10%、成長戦略、TPP、そして…
さすがにこの頃になると、与党内でも菅首相の政治姿勢に疑問符が生じるようになった。それに対して、菅首相は「脱小沢」で切り返した。政策ではなくても、大衆が食いつきやすいテーマであればなんでもいいのだろう。
与党内の不満分子を「脱小沢」で切り捨て、政治的な苦境からの脱出を模索しているときに、東日本大震災が起こった。その直前に批判されていた外国人政治献金問題もうやむやになった。大震災で与党内部にあった菅降ろしが一気にしぼんだ。だが、震災対応や原発対応での不手際で、再び菅降ろしが起こった。
ここで持ち出したのが「脱原発」。一方、政治手法ではズル菅の本領発揮で、騙されるほうも悪いが鳩山前総理や民主党員を騙して、内閣不信任案を乗り切った。首相は内閣不信任か解散・総選挙しか法的にはやめさせることができないので、辞めないと言い張る菅首相は今や無敵状態だ。
そして、退陣時期が取り沙汰される最中で、また突如政権の最優先課題として浮上したのが「電力買取り法案」だ。
これまでいろいろと政権の最優先課題を持ち出すが、どれも結果を出していない。課題をあげるだけなら評論家でもいえる。政治家に求められているのは結果だ。
いうまでもないが、政権の最優先課題は一つだ。それも1年くらいではできない。用意周到な準備の上で、政治的な山がいくつもあり、3年くらいかけて行う。私が深く関係していた郵政民営化も、経済財政諮問会議での議論に1年、法案準備で1年、その後総選挙などがあって、実施まで2年と計4年間を費やした。