東日本大震災が起きた瞬間の成田空港で、大量のグランドスタッフ(航空会社の地上勤務従業員)が、客を避難誘導することなく、我先にロビーから逃げ去っていく――。そんな光景を撮影した動画が「ユーチューブ」にアップされ、ネットで騒動になっている。
東京新宿の大手百貨店でも、男女2人の販売員がいちはやく手を繋いで逃げ出した映像が「ユーチューブ」にアップされ、物議をかもした。
「客より先に逃げてどうするんだよ・・・」
「ユーチューブ」にアップされた問題の映像は2011年3月11日に撮影されたもので、
「地震発生時の成田空港第1ターミナル出発ロビーの様子です」
と説明している。出発ロビーの1つ上のフロアから撮影しているため、全体を見渡す形の映像になっている。
地震が起こると、乗客と思われるカートを押している人や、キャリーバッグを持っている人が通路を走り出した。その直後、避難誘導する人はいない状況で、制服を着た大量の女性と男性があわてた様子で走り、通路を横切ってロビーの外へ避難していく。
一時、制服を着た1人の女性が通路に出て誘導するようなアクションを見せたが、それも数秒で終わった。通路にはへたりこんでいる乗客もいる。
従業員が逃げたためカウンターは無人状態。ガラガラになったロビーには、避難できていない乗客の姿もあった。
この映像は27万回以上閲覧されていて、「ユーチューブ」のコメント欄には、
「客より先に逃げてどうするんだよ・・・」
「空港関係者は一体何を勉強してきたんだ」
などといった批判が多い。中には
「自分だったら速攻逃げていたでしょうね、自分の命が一番大事でしょうよ」
といったものもある。
仙台空港ではグランドスタッフが活躍した
成田国際空港に話を聞いてみると、地震速報があると自動的に館内に警備放送が流れるシステムになっていて、この日も放送が行われた。空港としては、搭乗客はもちろん、従業員の生命を守るのは最優先であり、警備員が必死で安全な場所への避難誘導を行った、と説明する。ただし航空会社の従業員が、大地震などの際に会社からどのような対応を命じられているかはわからない、という。
航空会社の関係者に話を聞いてみると、大地震の際にどのような行動を取るかについてマニュアルはないが、どんな時にもお客の安全が最優先であり、お客を放って逃げ出すことは信じられない、と打ち明ける。今回の大地震では、仙台空港や羽田空港では従業員がからだを張ってお客を守った、という。仙台空港では避難誘導のほか、津波の影響で空港が孤立し外に出ることができない状況の中、VIPルームの開放や、機内食の配給、毛布を配るなどお客を励まし続けた。成田とは大違いだ。