日本経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長)が菅直人首相に対し、吠えまくっている。菅首相の態度や言動をみれば、その苛立ちや憤りはわからなくもないという声もあるが、とにかく激しい。
2011年6月20日の記者会見では、菅首相が退陣を表明しながら時期を明言せずに居座っていることに、「自分の言ったことをきちんと実行しないと、若い人たちの教育上も具合が悪い」と述べ、出処進退を明らかにする事とともに、暗に早期退陣を求めた。
電力会社は経団連の有力メンバー
この日の米倉会長は痛烈だった。東日本大震災の復興基本法が震災後3か月経っても成立していないことに、「なんと悠長なことをやっているのか。被災地の方々の生活を考えると、一刻の猶予も許されない。政治の実行力や判断力、すべて物足りない」と、政治の現状を嘆いた。
原発の再稼働については「政府は一歩、踏み出してくれた」と一定の評価をしたものの、「政府の責任で安全基準を見直し、再発防止を徹底するという基本条件は残念ながら満たされていない」と、原発周辺の住民の理解が得られるよう情報開示を進めて説得に努めるべきとクギを刺し、再生可能エネルギーについては「国の将来を左右する中長期のエネルギー政策の議論は復興のめどがついてから始めるべき」と指摘。政府が導入を目指す「固定価格の全量買い取り制度」では、「(いま必要な議論なのか)疑問を抱かざるを得ない」と否定的な見方を示した。
原発事故の対応を含め、電力問題をめぐって米倉会長と菅首相は、ことごとく対立している。4月26日には原発事故の補償問題への対応について「間違った陣頭指揮は混乱を起こすもとだ」と、菅首相に対して「ダメだし」。5月23日には電力の発送電分離について、「賠償問題にからんで出てきた議論で、動機が不純」とまで言った。
国際アナリストの枝川二郎氏は、「経団連にとって電力会社は有力メンバーですからね、それは(東電を)擁護しますよ。再生可能エネルギーへの転換といわれても、そう簡単には賛成できません」と、経済界の「ドン」の立場を強調する。
菅政権は「政治的パフォーマンス」ばかり
前出の枝川氏は「経済状態が悪化している不満があるのでしょう」とみている。そのうえ、菅首相がポピュリズムに乗っかって耳ざわりのよいことばかりをぶち上げる。
象徴的なのが浜岡原発の突然の稼働停止だという。2011年5月9日の記者会見で米倉会長は、「民主党政権は結論に至る思考過程がブラックボックスで、唐突感が否めない。自分の意見を発表してから中部電力に説明するという手順は政治的パフォーマンスにほかならない」と、痛烈に批判した。
浜岡原発の停止後に、原発が立地する自治体が「浜岡原発との安全性の違い」を政府がきちんと説明するまで再稼働を認めないと次々に表明。事態は今なお混乱して、経済界をヤキモキさせている。
思いつきのようにポンポンと公言してしまう菅首相と、コミュニケーションがうまくとれない、イライラが募っているようでもある。