菅首相が妙に元気で強気だ。「菅降ろし」の動きは消えてはいないが失速感も出てきた。菅首相が元気な背景には、いざという時には、「脱原発」を掲げて衆院を解散し、そして圧勝――とのヨミがあるから。そんなシナリオさえささやかれ始めた。
「野心家である菅直人という政治家の考えたいシナリオだと思うんです」。争点を脱原発の是非に絞り、菅首相が解散に打って出る可能性について、自民党の大島理森・副総裁は2011年6月18日、テレビ東京の「田勢康弘の週刊ニュース新書」に出演してこう語った。「菅首相ならやり兼ねない」というわけだ。
自民大島副総裁も警戒
大島氏は勿論、「脱原発解散」には反対だ。エネルギー政策は「イエスかノーで議論する選挙にはなじまない」と訴えた。「あるべき論」はともかく、大島氏の表情には、「そんな解散総選挙をやられては堪らない」との思いがにじんでいるようにも見えた。
大島氏の脳裏に浮かんだのは、2005年の「郵政選挙」だったのかもしれない。自民党内の大反対を小泉純一郎首相が押し切って解散し、その結果、自民党が、というより「小泉派」が地滑り的大勝利を収めたあの選挙だ。「脱原発選挙」が「郵政選挙」の再来となれば、自民党は大敗しかねないことになる。
「脱原発」の定義にもよるが、例えば6月14日にNHKが報じた世論調査結果によると、今後の国内原発について、「減らすべきだ」47%、「すべて廃止すべきだ」18%だった。合わせれば65%にもなる。
また、浜岡原発(静岡県)の運転停止に関する全国世論調査では、「評価する66%」(毎日新聞、5月半ば実施)だった。「脱原発」を掲げた解散が、菅首相の追い風になる可能性はありそうだ。
「脱原発解散」が永田町内で一定の現実味をもって語られ始めたのは、6月15日の菅首相による再生可能(自然)エネルギー調達法案成立への意気込み表明あたりからと見られている。菅首相は、15日の会合で「菅の顔だけは見たくない、というのが本当なら早くこの法案を通した方がいい」と挑発したのだ。挑発した相手は、野党だけでなく民主党内の「菅降ろし」勢力も含まれているようだ。