夏休みを前に、航空各社が続々と国際線の値下げを打ち出している。背景には、東日本大震災の影響で激減した海外からの旅行者数を、日本発の乗客で埋め合わせたいという狙いもあるようだ。
引き下げが相次いでいるのが、「PEX」と呼ばれる、各社が出している正規割引運賃。震災前に夏場の運賃をすでに申請していたが、震災後、さらに安い料金を設定している。
外国人観光客の激減が運賃に反映
例えば全日空(ANA)は2011年5月26日、土曜日に目的地に滞在する際に適用され、6月の期間限定で販売される運賃「エコ割サマースペシャル」を発表。平日に出発した場合、最も安い場合で東京-ロサンゼルスで往復5万6400円、東京-シンガポールで2万9400円に設定した。通常のPEX運賃と比べると、ロサンゼルス線で2万5000円~5万8000円、シンガポール線も1万6000円~3万4000円割安になっている。
日本航空も、これに追随する形で、同様の条件の運賃「JALエコノミースペシャル」を設定。東京-ホノルルで往復3万2000円、シンガポールやクアラルンプール線は往復2万6000円という具合だ。
国際線の運賃は政府による認可制で、この運賃の申請が行われたとみられるのが5月の大型連休前後。運賃設定の背景には、震災後の外国人観光客の激減がある。日本政府観光局が5月19日に発表した訪日外国人に数は、前年同月比62.5%減の29万5800人。地域別に見ると、東アジアの落ち込みが特に激しく、香港が87.6%、シンガポールが82.6%、台湾が67.4%、韓国が66.4%と「壊滅状態」に近い。
JAL広報部では
「震災直後の需要低迷を受け、早期に夏場の消費行動の持ち直しを狙った」
と話す。震災で落ち込んだ分の需要を、急いで値下げしてすることで埋め合わせようという狙いのようだ。