松坂大輔右ひじ手術の衝撃 日本人の大リーグ移籍に逆風

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   「野球人生で最大の危機…」―。レッドソックスの松坂大輔が悲痛な叫びを上げながら、ロサンゼルスで2011年6月10日(現地)右ひじの手術をし、長いリハビリ生活に入った。カムバックは早くて1年後という。再び大リーグのマウンドに立てるのか。

「完治には手術しかない」 ショックのなか踏み切る

   靭帯の腱移植手術はルイス・ヨーカム医師の執刀で行われ、2時間ほどで終えた。30歳の若さでの手術にさすがの松坂も不安そうに話した。

「きょうからリハビリを行うが、1日も無駄にすることなくリハビリに取り組んでいきたい」

   松坂は手術まで相当悩んだ。元日本人大リーガーに電話で相談したこともあった。怖かったのだろう。検査で医師から「完全に治すには手術しかない」と通告され、ショックを受けたそうである。

   松坂が最後のキャッチボールをしたのは3日の試合前。翌日、観念したように「キャッチボール程度で次の日に状態が悪くなっているのが分かるほどだった。『もう、だめだ』と思った」と言った。高校時代から全力投球してきたのが原因だろう。

第2の村田兆治になれるか

   地元ボストンのメディアによると、手術をした投手のうち、カムバックしたのは85%、とのこと。しかも主力として再起する確率はかなり低い。それを松坂は気にしていた、と関係者は語る。

   肘の故障は先発完投型投手の宿命といっていい。史上最高の左腕ともいわれるドジャースのサンディ・コーファックスは2年連続最多勝、防御率1位に輝きながら「肘がもたない」と現役引退。「その後の人生を考え」て手術をしなかった。

   手術が有効であることを証明したのは、やはりドジャースのトミー・ジョンだった。手術後の1975年、1シーズンをリハビリに充てて完全休養。76年に復帰し20勝を挙げた。

   ジョンを手術したフランク・ジョーブ博士に委ねたのがロッテの村田兆治。「考えつく治療を試みたが、効果がなかった」すえの決断で、83年の1年を欠場した後、翌年カムバックして「まさかり投法」がよみがえった。日曜日に先発登板する「サンデー兆治」として話題となったものである。

   巨人の桑田真澄もジョーブ博士の手術を受けたが、かつての力は戻らなかった。松坂は当然「第2の兆治」目指す。

日本球界を襲う「松坂ショック」

   大リーグは実力のみの世界で、過去の実績や温情は通用しない。地元紙は「松坂の時代は終わった」と断じている。その理由として「いつも故障がちだった」「調整方法で球団とうまくいかなかった」などを挙げている。つまりレッドソックスに戻る場所はない、という厳しい見方なのだ。ワールドシリーズMVPの松井秀喜が放出される世界なのである。

「高額な投資をしたレッドソックスに申し訳ない気持ちでいっぱいだ」

   松坂は手術に際してそう言った。レッドソックスは松坂と西武に対し、総額120億円を払った。松坂の6年契約の取り分は60億円といわれている。その分、周囲からの風当たりが強かった。

   来シーズンは契約最終年になる。とにかく試合で投げられる状態にならなければ「解雇」だ。他チームとの契約はキャンプでテスト生として参加することになる。それでも高額契約は望めない。

   いま大リーグ各球団は日本選手獲得の考えを改めている。松坂への投資効果だ。松坂の大リーグ通算成績は今季の3勝を含めて49勝。「1勝あたり1億2000万円」になる。日本球界にいる大リーグ希望選手の契約はかなり厳しくなり、日本ハムのダルビッシュ有らに「松坂ショック」が襲うだろう。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)

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