不漁になれば輸入ものも価格が上昇
現在のウナギの養殖は、卵からふ化させるわけではなく、天然のシラスウナギを捕獲してから育てる。日本に限らず中国や台湾でも、シラスウナギなしでは養殖が不可能なので、いったん不漁になれば輸入もののウナギも価格が上昇する。
水産総合研究センター増養殖研究所によると、ウナギの生態はまだ不明な点が少なくないという。単純に飼育していても卵は生まず、人工的に卵からふ化させることに成功してもエサが分からないため育てられない。人工ふ化は1973年に北海道大学で成功したが、生まれた「仔魚」(シラスウナギに育つ前の幼生の段階)を育てる方法が長年解明できなかったという。
2010年4月、同研究所ではウナギの「完全養殖」に成功したと発表。人工ふ化させて生まれた仔魚をシラスウナギ、さらに成魚にまで育て、そこから卵を生ませて次の世代の「人工ウナギ」をつくりだしたのだ。
この仕組みが実用化されれば、年によって変動する天然シラスウナギの「漁獲量」に振り回されることなく、安定した養殖が可能となる。だが同研究所によると「現段階では、完全養殖できるのは数百匹程度。実際に各地の養殖場で飼育して、ウナギが市場に出るようにするためには億単位の数が必要でしょう」と話す。家庭の食卓に上るほど「大量生産」して採算の合う事業にする段階は、まだ見えていない。
夏を前にして、大手外食や牛丼チェーンでは「うな丼」「うなぎ定食」といったメニューが出始めたが、値上げを余儀なくされたところもある。しばらくはシラスウナギの毎年の捕獲量に一喜一憂するしかなさそうだ。