全国のウナギ料理店が、ウナギの仕入れ価格の上昇に頭を悩ませている。養殖に欠かせない稚魚のシラスウナギの不漁が原因だ。
ウナギは卵から育てることが難しく、天然のシラスウナギに頼るしかない。近年、研究レベルで「完全養殖」が成功したが、実用化まではまだ時間がかかると見られる。
2年連続で不漁は過去に例がない
農林水産省の「漁業・養殖業生産統計」によると、2010年のウナギの国内養殖生産量は2万533トン、輸入量は5万3072トンとなる。輸入先は中国と台湾が占める。
養殖では、国内の河川で稚魚のシラスウナギを捕獲し、養殖施設で育てて成魚にする。このシラスウナギが、2年連続で不漁となった。日本養鰻漁業協同組合連合会(日鰻連)に聞くと、養殖のために飼育池に放つ「池入れ」できた量は、10、11年ともに20トンにとどまった。最低ラインギリギリの量で、日鰻連では「十分とはいえない」とため息をつく。漁の期間は前年12月~4月までと定められているため、今年は既に終了したことになる。
日鰻連によるとウナギは、日本の南、北西太平洋のマリアナ諸島近海で産卵するという。ふ化した幼魚は海流に乗って西のフィリピン方面まで泳ぎ、今度は黒潮の流れで北上、日本や台湾、中国までたどりつく。ところが2010年は、エル・ニーニョ現象で海水温に変化が起きたため、「ウナギはマリアナ諸島よりも南で産卵し、フィリピンに向かう海流とは別の海流に乗ったのでは、と考えられます」と日鰻連では説明する。そのため黒潮に届いたシラスウナギが少なく、日本に着いた分も減ったというのだ。一方、2011年の不漁については原因が分かっていない。「2年続けて少なかった、というのは過去に例がありません」(日鰻連)。
こうなると頼みの綱は「輸入もの」なのだが、これも価格が上昇している。理由はやはり稚魚不足で、輸入先の中国と台湾の状況は、日本より悪い。中台ともに2年前は20トンを超えていたシラスウナギの量が、2011年は中国で8トン、台湾にいたっては0.7トンと激減していると、日鰻連は明かした。