日産自動車と日本自動車連盟(JAF)が充電機能を備えたロードサービスカーで電池切れの電気自動車(EV)を救援する実証実験を神奈川県と東京都の一部でスタートした。2011年12月31日まで行い、日産は実験の結果を今後必要となる充電インフラの整備に役立てるという。
これは日産が世界で初めて本格的に量販したリーフはじめ、今後EVを普及させるには、航続距離の向上とともに充電スタンド(充電スポット)の増設が鍵を握るからだ。
EVの救援で多いのは路上の電池切れ
JAFによると、2010年8月~2011年4月末に出動したEVの救援は86件。このうち、路上の電池切れが73件と最多で、市街地よりも急速充電スタンドが少ない郊外での利用が課題となっていることが浮き彫りになった。
日産自動車の「電気自動車総合情報サイト」による と、日産リーフの航続距離は国土交通省審査の「JC08モード」で200キロ。同モードは従来の10.15モードに代わり、実際の市街地の渋滞などを反映した厳しい試験方法だ。日産は同サイトで、開発拠点のある神奈川県厚木市から国道246号で静岡県沼津市まで、沼津からは国道1号を走り、静岡県磐田市までの196キロを充電なしで走破したと公表。カタログ値の「航続距離200キロ」を実証している。
もちろん、これはこれで事実だろう。ところが平坦路や一般道だけでなく、高速道路や山坂道を組み合わせると、事情は大きく変わってくる。例えば、東京都内を出発し、箱根を回って都内に戻る日帰りドライブ。大阪市内から六甲山をめぐり、有馬温泉に抜けて帰阪する日帰りドライブ。いずれもガソリン車を満タンにして出発すれば、給油の心配なしに自宅に戻れるだろう。ところがこれがEVとなると話は別だ。箱根や六甲のドライブは、バッテリーの残量と格闘し、カーナビで充電スタンド探しに奮闘する過酷なドライブとなるようだ。
事実、インターネットにはリーフのユーザーが東京都内から箱根にドライブに出掛け、箱根ターンパイクの登坂で「バッテリーがどんどん消耗し、山頂で途方に暮れた」などとするレポートを公表している。自治体が運営する充電スタンドは土日が休業だったりして、実際に充電できるスタンドを探し当て、携帯電話で予約したりするのは、心理的にも物理的にも負担だという。自動車専門誌や経済専門誌も同様のテストを行っているが、リーフで箱根のドライブは厳しいようだ。
日産USAは航続距離100~222キロと公表
いずれにしても、東京から箱根をめぐるドライブ は、途中で充電が必要で、場合によっては帰京までに複数回の充電が必要になるようだ。箱根でバッテリー不足となり、「最寄りの充電スタンドを探したら沼津と表示されたため、意を決して箱根ターンパイクを下ったら、回生ブレーキで小田原の料金所で走行可能距離が80キロと表示され、助かった」などという、笑えないユーザーレポートもある。
米ウォールストリートジャーナルによると、日本の国土交通省のテストでは、リーフが1回の充電で走行できる距離は200キロだが、米環境保護庁(EPA)のテストではフル充電の航続距離は73マイル(120キロ弱)という。
日産は「それぞれの国の運転の特徴が市場ごとのテストに反映される」とし、 「どの程度の強さでアクセルを踏むか、エアコンの使用状況はどうか、一般道路と高速道路の渋滞状況はどうかといったバッテリーの消耗に影響を与える要因に左右される」と説明している。日産USAは代表的な走行条件に基づく航続距離を具体的に示 しており、リーフの航続距離が100~222キロの間で変わると公表している。
今回、日産がJAFと開発したロードサービスカーは、40キロ走行できる充電が20分で可能な急速充電機を搭載。国内メーカーのEVすべてに対応し、実証実験期間中はJAF会員でなくても無料で救援する。JAFはサービスカーの利用状況などのデータを集め、今後のロードサービスに役立てるというから、EVユーザーには、ひとまず朗報に違いない。