「菅首相が6月中にも正式に退陣表明するらしいね」「えっ?内閣改造して政権延命するって話だけど…」――菅首相の進退をめぐる会話は今、かみ合わなくても仕方なさそうだ。メディアの見立ても分かれている。
「特例公債法案成立へ 首相退陣条件整う」。2011年6月16日付の毎日新聞朝刊1面(東京最終版)の見出しだ。記事には「6月中にも菅首相が正式な退陣表明を行う可能性が強まった」とある。民主執行部は「7月中の首相退陣を視野」に調整を進める構えだ、としている。
「この法律通さないと責任果たしたことにならない」
一方、産経新聞の1面は、「首相、内閣改造の意向 来週にも 早期退陣論封じ」とある。別の面の関係記事では、公明党が会期延長を容認する方針に転じたことを指摘した上で「延命への自信を深めたのか、首相はますます強気になった」としている。
朝日新聞は3面で「民主 首相説得に失敗」「野党 菅降ろしが不発」と報じた。首相退陣時期の想定として、7月上旬から9月下旬まで4パターンの可能性を図で紹介している。
当の菅首相は、やる気を増しているように見える。国会の会期延長に関連して、民主党の岡田克也・幹事長や枝野幸男・官房長官が「会期が延長されたからといって首相の早期退陣がなくなるわけではない。両者は無関係だ」と、政権運営にやる気を見せる菅首相にクギをさしても「糠に釘」のようだ。6月15日には、菅首相は再生可能エネルギー電気調達措置法案の成立について、強い意気込みをみせた。
超党派の国会議員らによる15日の会合の中で、菅首相は「菅の顔だけは見たくない」という人が国会に結構いるとして、「本当に見たくないなら早くこの法案を通した方いい」と語ったのだ。
単なる冗談と取れなくもないが、退陣に向けた条件ハードルをますます高く上げたとの受け止め方も広がっている。自民党などに慎重論が根強い同法案について、「これも成立しないと首相を辞めないよ」と突きつけた形だ、というわけだ。菅首相は「この法律を通さないと政治家として責任を果たしたことにならない」とも語っている。