3月期決算企業の株主総会の季節がやってきた。2011年の集中日は6月29日で、上場企業約2500社の4割程度にあたる1000社超が開催する予定だ。原発問題で揺れる電力会社は東京電力と中部電力が28日、関西電力、東北電力が29日で、それぞれ紛糾も予想される。
全体を見回すと今年は、総会後の懇親会を中止・簡素化し、総会会場の節電に努めるなど、震災の影響が色濃いのが特徴だ。
会場の温度を高めに設定する「節電モード」
りそなホールディングス(HD)は6月24日、大阪市中央区の「りそな大阪本社ビル」で総会を開く。大阪で開く総会だが、りそなHDは5月時点で、会場の温度を高めに設定する「節電モード」にすることを決定していた。「全国的に夏の電力需要がひっぱくする事情を考慮した」という。株主には記念品の扇子を配り、ささやかながら涼んでもらう趣向だ。
日立製作所は、6月24日に東京都文京区の「東京ドームシティホール」で 開く総会の招集通知に「節電」を打ち出した。冷房を弱めにすることから、会社側の役員が「ネクタイ・上着なし」であることを明記して理解を求めるだけでなく、株主に対しても「軽装での出席」を要請した。招集通知には「お土産のご用意はございませんので予めご了承くださいますよう」との一文も加え、華やかなイベントではない自粛モードであることも伝えている。
こうした自粛モードは他の企業にも広がっている。 目立つのは株主総会後の懇親会の中止や簡素化だ。
ゴーン社長との記念撮影はできなくなる
日産自動車は29日に横浜市で開く総会の後、例年は開催している株主とカルロス・ゴーン社長ら役員との懇親会をとりやめる。従来は1000人以上が入れる大型施設を借り切り、軽食などを提供していた。ゴーン社長と記念撮影できるなど、楽しみしている株主も多い会合だが、その経費を被災地支援に振り向ける。「震災からの復興」に努めるイメージをアピールする狙いもありそうだ。日産が懇親会を中止するのはリーマン・ショック後の2009年以来、2年ぶり。
健康食品大手のファンケルは、6月18日に横浜市で開く株主総会の招集通知に「懇親会の中止と展示会の開催について」との告知を掲載した。これまでは同社の商品を使った軽食を提供していたが、「被災地の事情等諸般の状況を鑑みて」中止し、商品展示会に衣替えする。給食・カラオケ大手でジャスダック上場のシダックスも、6月29日に東京本社で開く総会後の懇親会を中止する。従来は本社内のレストランで昼食を提供していたが、やはり「被災地の状況等、諸般の事情を鑑み」という理由だ。
一方、株主の機関投資家も今年は震災の特殊事情に配慮する。大和住銀投信投資顧問や野村アセットマネジメントは、震災で業績が悪化した投資先企業が、自社基準を満たさなくても、例外措置 として、取締役再任などに反対しない方針。例えば大和住銀は「3期連続経常赤字で無配」なら総会で取締役再任など に反対する内規があるが、今回の震災の悪影響を受けた企業については、例外規定を設けた。