2週連続予選落ちという屈辱を抱えたまま石川遼はメジャー大会の全米オープンに臨む。それでも海を渡ることで気分転換になり、持ち前の勝負強さにで優勝争いに期待がかかる。優勝争いに絡み、大震災で沈みがちの日本にカツを入れるか。
「考えるゴルフ」への転換が裏目?
先週の日本ツアー選手権2日目(2011年6月3日)に通算18オーバー、119位で姿を消したときは見るも無残だった。ダブルボギーどころかトリプルボギーまでたたく始末。蚊の鳴くような声だった。
「こんな短い(1メートルの)パットを外すなんて…恥ずかしい」
いつも前向きなだけに、こんなにショックをあからさまにするというのは珍しい。父親(勝美氏)も首をかしげていた。
「パットが悪すぎる…」
2週前の試合(とおとうみ浜松オープン)ではプレーオフに持ち込み、敗れたとはいえ復活の兆しを見せた。それだけに2008年以来の2週連続予選落ちは本人がもっとも信じられない思いだろう。
不振の成績ではあるけれども、石川は、実は全米オープンに備えての準備をしている。メジャーに勝つためのクラブがその武器。「0番」というもので、1番ウッドよりも低い弾道で飛ぶ。
「刻むこともある。そういう(ゴルフをする必要のある)時期に来たと思っている」
石川の特徴はパワー全開で向かっていくところ。それがライバルを圧倒し、逆転優勝につなげてきた。世界の有名ゴルファーが評価するのも、いつも挑戦するエネルギッシュなプレーを見せるからである。
2011年は確実に勝てるスタイルに変えてきたように見える。そこに成績の悪さが顔をのぞかせているのではないか。ゴルフ記者はこう語る。
「父親はこう言っていますよ。『これまで(の遼)は運任せで勝ってきた面がある。考えるゴルフをする時期に来たのだと思う。考えれば悩む、ということだろう』とね」
石川は東日本大震災に被災者に対し、ゴルフ賞金は全て義援金とする、としている。その成果がなかなか出ないことの焦りもスコアに響いているのかもしれない。
「世界の遼」になるために米国常駐をどうか
そんな石川だが、全米オープンではがらりと変わったプレーを見せるような気がしないでもない。そう期待を抱かせるだけの意外性と爆発力を持ち合わせているからだ。
「強い気持ちは重要だ。それには練習量と練習の質だ」
19歳の若さでこう言い切る自信。もう日本で戦うレベルを超えた選手だと思う。アメリカに滞在し、本格的にPGAツアーでプレーしたらどうだろうか。
「マスターズで優勝することが子供のころからの夢」
それを現実のものにするには、そのときだけ渡米しても勝てる確率は限りなく低い。ゲスト感覚で行くのではなく、どっぷりと本場のゴルフ界につかってもいいのではないか。プロ野球選手が大リーグに行くように。
石川はそれを可能にするだけの条件が整っているはずだ。もっとも大事な経済面はほとんど不安がないだろう。テレビCMだけでも大手企業がずらり。だれもがうらやむほどである。
「かつての実力者、青木功やジャンボ尾崎将司、中嶋常幸らはそういう期待をされていたが、アメリカ常駐はなかった。石川が日本からいなくなることはさびしいが、ぜひ『世界の遼』になってほしいと思う」
そう話しているゴルフ界の幹部は多い。大きく育ってほしい、という思いにこたえられるか。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)