局地的に高い線量になる「放射線ホットスポット」が、自治体などの調査で次々に明らかになっている。福島市内のオフィス街では、1日で以前の許容量の年1ミリシーベルトを超える線量が計測された道路沿いの側溝もあったというのだ。
ネット上で、ホットスポットという言葉に関心が集まっている。
専門家が「柏、松戸、流山、三郷」と指摘して騒ぎに
どこから生まれたかはよく分からないが、周辺に比べて異常に高い放射線量を計測する地点と言った意味らしく、一部専門家がこの言葉を使い始めてから広まったようだ。チェルノブイリ事故でも、発電所からかなり離れた地点で、高い数値を示す地点がポツポツあったという。
元原子力安全委員会専門委員の武田邦彦中部大教授は、ブログで2011年5月10日、「柏、松戸、流山、三郷のホットスポット」と千葉、埼玉両県のケースを取り上げた。原発に詳しい民間有志の調査で、これらのスポットは、以前の基準、年間許容量1ミリシーベルトを超えていたというのだ。もっとも、事故発生後、文科省は暫定的として年間の許容被ばく線量の目安を「20ミリシーベルト」に変更している。
武田氏は、テレビでもお馴染みだけに、「子供を守ってください」と呼びかけると、住民から不安が高まった。千葉県柏市では、主婦ら約200人もが1万人分の署名を集めて、6月2日に市に提出。子どもが関わる全施設の線量測定や除染を要求する事態にまでなった。
こうした動きを受けて、千葉県は、県内6市で5月31日と6月1日に大気中の放射線量について独自調査を行った。その結果によると、柏市では、1時間当たり0.54マイクロシーベルトと最も高い値を示した。年間にすれば、以前の許容量超の2.8ミリシーベルトだ。文科省がさらに南にある千葉県市原市のモニタリングポストで行っている計測では、5月31日は0.044マイクロシーベルト。県の独自調査の方が、10倍以上も高かったわけだ。
その理由としては、原発からの距離といった地域的な違いのほかに、計測地点に置ける高さの違いもあったようだ。文科省が地上から7メートルで測っているのに対し、県では日常生活空間に当たる50センチで測っている。
こうした経緯は、テレ朝系で6月5日に放送された「サンデー・フロントライン」でも紹介された。番組では、専門家の話として、風向きや雨によって放射性物質がホットスポットに集まったのではないかと分析している。
自治体などの独自調査がようやく始まる
自治体などによる独自調査は、原発事故から3か月近くも経って、首都圏などで行われるようになっている。サンデー・フロントラインの番組調査では、東京23区のうち15区が調査を実施、あるいは実施予定だという。
原発事故が起きた福島県でも、ようやくホットスポットへの対応を始めた。県が2011年6月5日、モニタリングポストを県内各地に増設する方針を明らかにしたほか、文科省も6日、県内や隣接県一部の2500か所を対象に大気や土壌のサンプル採取を始めた。
とはいえ、すでに深刻なホットスポット汚染が明らかになりつつある。
国の原子力安全委員会が5月24、25日に福島市内のオフィス街で地上1メートルの放射線量を測ったところ、高い値を示す地点が見つかった。泥や落ち葉が積もった側溝の上では、1時間当たり3~4マイクロシーベルトになった。
これだけでも、年間にすれば現在の許容量20ミリシーベルト超だが、側溝の泥に測定器を近づけると、約100マイクロシーベルトに達する地点もあったというのだ。年間なら876ミリシーベルトで、1日浴びただけで、2.4ミリシーベルトと以前の許容量を超えてしまうことになる。
福島市では、土壌汚染も深刻なようだ。県原子力センター福島支所が事故直後の3月15日に国道近くの雑草を測ったところ、1キログラム当たりの放射性セシウムが16万9000ベクレルに達した。野菜類や茶葉の規制値500ベクレルをはるかに上回る値だ。
この数値は、ようやく6月3日になって公表された。セシウムは半減期が30年と長いだけに、今後は抜本的な対策が求められそうだ。