AKB48の3回目の「総選挙」は、前田敦子さん(19)が大島優子さん(22)を振り切って1位の座に返り咲くという結果で幕を閉じた。だが、この総選挙をはじめとする、いわゆる「AKB商法」が今後長続きするかも不透明で、「次の一手」を打たざるを得ない情勢だ。
総選挙の「投票券」の役割を果たすシングルCD「Everyday、カチューシャ」は、2011年6月5日時点で、145万3000枚を売り上げている(オリコン調べ)。だが、1人で数千枚を購入して「推しメン」と呼ばれる、自分が支持するメンバーに大量に投票するケースも伝えられている。こうしたことから、「AKB商法」のいびつさを指摘する声も多い。
政治家、作曲家、作詞家、シナリオライターなど出てくる
逆に言えば、この「『会いに行けるアイドル』をファンが支援する仕組み」が、AKB人気を支えているとも言える。12万2843票を獲得して2位になった大島さんは、事実上の敗戦の弁を述べる中で、
「この票数、『(CDを)1人何枚も買って、本当に総選挙と言えるのか。選挙は、1人1票じゃないか』。いろんなこと、AKBのまわりは言います。ですが、私たちにとって、票数というのは皆さんの愛です。私たちは、愛されて、こんな大きいステージで、こんな大きい武道館で、こういうイベントをやることができます」
と、批判に反論すらしている。
だが、さすがに「現状維持」とはいかないのも事実で、ファンからは、様々なアイディアが出ている。例えば、フジテレビのワイドショー「とくダネ!」が、総選挙会場でファンにアンケートしたところ、
「世界進出して、売り上げ枚数でマイケル・ジャクソンを抜く」
「少女時代やKARAなどの外国アーティストとコラボする」
「『AKB党』で、政治に打って出る」
といった声があがっている。このアンケート結果を見せられた総合プロデューサーの秋元康さんは、
「AKBとしては動かないが、この中から政治家を目指すメンバーが出てくるかもしれない。 AKB自体が学校みたいなもの。そのうち、作曲家や、作詞家、シナリオライターなど、もっと広がっていく」
と、「卒業生」の将来の幅広い活躍に期待を寄せる。ただ、AKB48自体の今後の展開については、
「僕自身は分からない。AKBはある意味、ファンがアイドル、スターをつくるので、送り手側の事情だけでは、できない」
と、慎重だった。
韓国タレントと違い、海外で永続的に売れることはない
「会いに行けるアイドル」という、現状の距離感を維持することが大事だとの見方もある。J-CASTニュースモノウォッチでもコラム「音盤見聞録」を担当している加藤普(かとう・あきら)さんは、この距離感を「隣のお姉ちゃん」と表現。
「歌やダンスが下手なのは問題ない。それよりも、ファンとの距離ができることが問題だ」
と見る。ソロでのCM出演やCDデビューを果たすなど、活躍の幅を広げたものの、4位から8位に大きく順位を落とした板野友美さん(19)を例に、
「ファンからすると、『手が届かなくなった』という感じが大きいのでは。近寄り難い雰囲気が敬遠された面もあるでしょう」
と分析している。「スター化」は、逆に嫌われるということのようだ。
では、「海外に打って出る」プランについてはどうか。実際、今回に総選挙は、韓国、台湾、香港の映画館でも中継されているし、11年5月からは、シンガポールでの定期公演も始まっている。だが、加藤さんは、
「『となりのお姉ちゃん』というのは、非常に日本的な考え方。東南アジアや、東アジアの人が求めているのは、やはり『スター』なので、そのままの形で売れることはないのではないか」
と否定的だ。韓国の少女時代やKARAとの違いも大きい。
「少女時代やKARAは、韓国にとって輸出品目のひとつで、いわば国策のようなもの。売れることが大前提。だが、AKBはそんなことはなくて、うまくいかなければ引き上げればいい。気合が入っていない分、そのままのやり方では、海外で永続的に売れることはないでしょう」
と、日本市場に特化するのが安全だとみている。