東京電力が、2011年夏に電力需給がひっ迫した場合を想定して「計画停電」実施に関する詳細を発表した。
夏の電力不足については政府が、東電管内の大口契約者に電力使用の制限を行うことを決め、計画停電は「万一の場合」としている。だがここにきて、関西電力が電力不足の恐れから東電へ電力を融通しないと発表。「万一」では済まない可能性も出てきた。
1日1回2時間、23区は対象外
東電の2011年6月9日の発表によると、3月に実施した計画停電と比べて運用を一部見直している。6月20日以降で万一電力不足が発生した場合に、1都8県を第1~5グループに分け、さらに各グループをA~Eの「サブグループ」に細分化して実施する。グループには、送電の構造の関係で3月は対象から外れていた横浜市の一部なども含まれる。茨城県は東日本大震災の被災地のため、全域が対象外となった。
実施回数は1日2回から1回に、また停電時間は各グループ1回3時間から2時間へと短縮される。時間帯も、前回は6時20分~22時までだったが今回は、9時30分~20時と5時間ほど短くなった。
3月の実施時に、運行上の度重なる変更で大混雑を引き起こした鉄道は、医療機関と並んで停電の対象から除外。東京23区についても東電では、人口が密集していることや、鉄道の運休や信号の消灯が発生した場合の社会的な影響の大きさ、また本社を置いている企業が多く重要な機能が集中している点を挙げて、計画停電は行わないとしている。東電では自社ウェブサイトで、利用者の住所からどのグループに属しているかを調べられるようにしている。
「原則不実施」としながらも、需要の急増や突発的な気象の変化、設備トラブルが発生した場合に「やむを得ず」行うと東電は説明。政府から発信される電力の「需給ひっ迫警報」に基づいて、計画停電の実施の「可能性」をすみやかに周知する一方、実施時間の「2時間前」に可否を判断し、サイトなどで流すとしている。ギリギリまで停電回避を探るための対処法と思われる。
2時間前に実施の可否通告「無計画停電だ」
計画停電は3月29日以降、実施の見送りが続いている。しかし夏場を想定した今回の発表で、利用者からは「またか」「23区除外は不公平」との不満や、「熱中症で運ばれる人が増えそう」と心配する声が上がっている。2時間前まで停電が起きるかどうか分からないという対応は評判が悪く、「突然停電宣告するのは『無計画停電』だ」と手厳しい意見もネットでは見られる。
経済産業省の「電力需給緊急対策本部」(現・電力需給に関する検討会合)は5月13日、今夏の東電の電力供給力として最大5380万キロワットとの見通しを示した。一方、昨夏のような猛暑に見舞われた場合を想定して需要を6000万キロワットと見込んでいるため、電力不足は決定的との結論だ。そのため経産省では大口需要者に対して、ピーク時の電力消費を15%削減する電力使用制限令を発表。ギリギリの対応で何とか乗り切ろうとしている。
この措置で、影響が広範囲にわたる計画停電を回避したい東電だが、新たな懸念材料が出てきた。6月10日に関西電力が、夏に電力不足に陥る可能性を明らかにしたうえで、管内の全契約者に対して7月1日~9月28日の期間、15%程度の節電を要請すると発表したのだ。これにより関電は、余剰電力を東電に融通することも中止するとした。東電にとって、頼みの綱としていた関電を頼れなくなるのは痛手となる。
3月の計画停電では、日常生活に混乱をきたしただけでなく、企業の生産活動にも大きく影響し、工業製品の製造ストップや食品の品薄を引き起した。その「悪夢」が繰り返されるのか、心配だ。