東京電力福島第1原発の「事故調査・検証委員会」(委員長・畑村洋太郎東大名誉教授)が、2011年6月7日初会合を開いた。菅首相は、「私自身を含め、被告といったら強い口調だが、『出席しろ』といわれれば出席する。政府から独立してしっかり判断してほしい」と挨拶した。
畑村委員長は失敗学の権威として知られている。マスコミもこの委員会の原因究明に期待している。ところが、「原因究明の動作ができなくなってしまう」として責任追及は目的としないと明言している。
「政府から独立」はウソだ
これは、委員長として政府が畑村氏を指名したときから予想されていた。失敗学は、失敗に学び同じ愚を繰り返さないようにするために、責任追及だけを追い求めない学問だからだ。
また、畑村委員長は原発と利害関係がないと政府は説明するが、原子力部署でないものの、原発メーカーの日立製作所の元社員であることを懸念する向きもある。
いずれにしても、菅首相の挨拶はかなり大げさだ。そもそも、この委員会は政府内組織で、委員長や委員は首相が任命している。
建前として、「検証委員会は、必要に応じ、内閣総理大臣を始めとする関係大臣、関係行政機関の職員、関係事業者の役職員、原子力に関する国際機関の職員その他の関係者の出席を求めることができる」(5月24日閣議決定)とされている。形だけ、菅首相に出席を求めるが、本格的な事情聴取ではないだろう。それに役人用語の「必要に応じ」とある。総理の出席について必要性がないということであれば、出席要請もできなくなってしまう。
菅首相の挨拶にもあり、マスコミ報道ではこの事故調査・検証委員会があたかも政府から独立しているかのような報道をしているが、それはミスリーディングだ。
この委員会の運営も政府の意のままだ。それは「検証委員会の庶務は、関係行政機関の協力を得て、内閣官房において処理する」との閣議決定(5月24日)からわかる。