(5日大槌発=ゆいっこ花巻支部;増子義久)
「8万人以上の犠牲者を出した四川省大地震から3年が経ちましたが、まだ復旧は進んでいません。だから、安易な気持ちで頑張りましょうとは言えないのです。お互いに悲しみを共有しながら支え合って行きたいと思います」――。
多文化共生をモットーに掲げ、日本文化の紹介やアジアからの留学生の支援などを続けているNPO法人「アジアの新しい風」(事務局:東京都世田谷区、林雄二郎理事長)が4~5の両日、ゆいっこ花巻支部の橋渡しで大槌町を訪れた。そのメンバーの中国人留学生たちは未曽有の大災害を経験した受難国同士の気持ちをこう語った。
今回、ボランティアを兼ねて現地を訪れたのは中国やベトナムからの留学生や日本人スタッフら30人。初日は大槌港で瓦礫(がれき)と化した造船所の再建に取り組んでいる作業員を激励。船を陸揚げする巻き上げ線路の清掃を手伝った。手際よい連携作業で土砂に埋まった線路が姿を現すと、中国・清華大学の張馨心さん(22)は「少しのお役にしか立てなかったけれど、一日も早い再建を祈ります」。
2日目は避難所になっている安渡小学校で日本人スタッフの一人、歌手の金井優佳さんが「故郷(ふるさと)」などの童謡を披露。すると、被災者の女性が「私、ハーモニカなら少し…」と飛び入り。今度は最前列に陣取っていた小学生の女の子が「私は手話ができるよ」。思わぬ手話入り"演奏会"に被災者の間からやんやの拍手が沸き起こった。
締めくくりは千羽鶴の贈呈。ベトナムのハノイ貿易大学から東京外国語大に留学しているブイ・ティ・トゥイ・ハンさん(19)とチャン・トゥ・チャンさん(19)が「ベトナムでも良いことを祈願する時に鶴をおります。この千羽鶴は貿易大学の日本語クラブの学生が作ったものです」と被災者の児童に手渡した。「多くを語らなくても悲しみを分け合うことができた。逆にこっちが勇気をもらった」。被災者のお年寄りたちは留学生に寄り添うようにしていつまでも話し続けていた。
ゆいっこは民間有志による復興支援組織です。被災住民を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資やボランティアの受け入れ、身の回りのお世話、被災地との連絡調整、傾聴など精神面のケアなど行政を補完する役割を担っていきたいと考えています。
岩手県北上市に本部を置き、盛岡、花巻など内陸部の主要都市に順次、支部組織を設置する予定です。私たちはお互いの顔が見える息の長い支援を目指しています。もう、いても立ってもいられない───そんな思いを抱く多くの人々の支援参加をお待ちしています。
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