退陣表明後「持論」をブログ掲載 菅首相の「私と風力発電」

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   菅直人首相が、首相官邸のブログの自分のコーナーを更新した。退陣の意向を示してから更新するのは初めてだ。その中で語られているのは政局のことではなく、題して「私と風力発電」。「原子力には詳しい」と自称していたとされる菅首相だが、実は、風力発電の推進は昔からの持論なのだという。

「風力や太陽光発電は、電力会社からは邪魔者扱い」

風力発電の推進は、菅首相の30年来の持論だという
風力発電の推進は、菅首相の30年来の持論だという

   官邸ブログの中には「先を見すえて」と題したコーナーがあり、「菅直人直筆のページ」とうたわれている。このコーナーが2011年6月6日夜、更新された。退陣表明以降、初めての更新だ。

   だが、その文面は、政局とはかけ離れたものだ。冒頭に、退陣を表明した民主党代議士会での発言が引用してあるものの、

「この中で述べた『次の時代』という言葉で私が思い描くものを、これから綴っていきたいと思います」

と、ひたすら風力発電のことが説明されている。

   ブログでは、

「私が初当選して、30年余。この間、風力や太陽光発電は、電力会社からは邪魔者扱いされ、その結果として、せっかく優れた技術を持ちながら本格的な開発ができず、ヨーロッパ諸国に比べて大きく立ち遅れてしまいました」

と、電力会社を批判。その上で、

「今回の原発事故を契機に、エネルギー基本計画を白紙から見直し、風力や太陽光発電などの自然エネルギーを『次の時代』の基幹的エネルギーとして育てることにしたいのです」

と、退陣の意向を表明した6月2日の会見と同様の説明をしている。

広報担当審議官「まさかここで、30年前からの話が登場するとは」

   このブログの内容は、さすがに首相周辺も唐突だと受け止めたようで、例えば、菅首相と古くから親交がある下村健一内閣審議官(広報担当)は、ツイッターに

「『これ、ブログに載せて。』いつものように唐突に、菅さんから原稿メールが届いた。不信任案否決後初のブログ、この激動の最中に一体何を書いたのか、と興味津々で開いたら…タイトルは『私と風力発電』!? この人は、色んな意味でスゴいわ」

と書き込み、驚きを隠さなかった。ただ、下村氏は、

「まさかここで、30年前から聞かされてた話が登場するとは」

とも書いており、決して唐突に飛び出した話ではないようだ。

   確かに菅首相は前出のブログの中で、1980年暮れに米国の風力発電所を視察したエピソードを披露しているし、首相の公式サイトのブログにも、風力発電の話題が散見される。例えば、01年9月10日には、内需拡大策を論じる中で、

「10年以内に電力の内10%を風力でまかなうという目標を決めればこの分野の投資が進む」

と、具体的な数値目標を示しているし、07年8月24日には、ドイツの電力会社が風力や太陽光で発電された電力を高く買い上げていることを紹介した上で、

「日本では風力などクリーンエネルギーによる発電を電力会社は販売価格よりかなり安い価格でしか買わない。電力会社としての経済合理性から言えばそうなるのだろうが、政策的には無策としかいえない」

と、電力会社批判を展開している。

   官邸ブログの6月6日の記事によると、「自然エネルギーによって発電した電気を固定価格で買い取る」という制度の法案が、東日本大震災が起こった3月11日に閣議決定されている。菅首相はブログの中で、

「このために少し遅くなってしまいましたが、この法案は、今の国会に出しています。この法案を成立させ、早期に採算が取れる水準に価格を設定すれば、風力や太陽光発電は、爆発的に拡大するはずです」

と訴えてもいる。

   「やりたいことが見えない」と言われ続けた菅政権だが、数少ない「やりたいこと」のひとつが、退陣表明後に示された形だ。

姉妹サイト