5月以降は急ピッチで生産の回復が進む
こうした弱い数字が続く中で、同じ31日、経済産業省が4月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整済み速報)を発表すると、楽観論が急速に広がった。4月実績は83.5と前月比1.0%の小幅上昇だったが、シンクタンクなどが注目したのは先行きの見通し。予測指数が5月は前月比8.0%、6月が同7.7%の高い伸びになり、「サプライチェーンの復旧が進んでいることから、5月以降は急ピッチで生産の回復が進む可能性が高い」(第一生命経済研)などの声が出た。
いうまでもなく、生産回復のポイントは、部品供給網復旧と電力不足の行方。自動車各社が生産の正常化計画を相次いで前倒ししており、2011年度の800万台と、2010年度の9割程度を確保するといった声も出ている。部品供給網は、「業種毎に復旧のペースに開きが出ている」(ニッセイ基礎研)とはいえ、「民間部門の懸命な取り組みにより、当初の想定に比べて、復旧が前倒しで進んでいるものとみられる」(みずほ総研)との声が一般的。
電力不足も改善。電力供給能力が3月時点での見通しと比べて上積みされているのに加え、節電対応も進み、平日に休んで土日に操業して電力使用を平準化させる、自家発電の増強、関東・東北地方以外で増産を実施などの対策が計画されている。このため、「当初懸念されていたほどには電力不足が生産活動を抑制しない可能性が高まっていると考えられる」(第一生命経済研)。
ただ、米格付け会社、ムーディーズ・インベスターズ・サービスが5月31日に日本国債の格付けを引き下げる方向で見直すと表明。東証で買い越しを続けてきた外国人投資家が5月第4週に、30週間ぶりに売り越しに転じたと発表された(6月2日)。大震災で経済・財政見通しが悪化する中、財政健全化や復興に向けた政府の実行力が疑問視されているためで、「日本経済最大のリスクは政治」(エコノミスト)という構図が続きそうだ。