景気の先行きは依然、不透明感に包まれている。経済指標の発表などにより楽観、悲観の見方が交錯しているのだ。ただ、ここに来て、自動車生産の回復前倒しなどでやや楽観的な見方が強まっているようだ。
内閣府が2011年5月19日に2011年1~3月期の国内総生産(GDP)速報を発表した時は、悲観論が広がった。実質GDP(季節調整値)は前期比0.9%減、年率換算で3.7%減と市場の事前予想(2%減程度)より悪く、「震災が日本経済に与えた打撃の大きさが鮮明になった」(大手紙)。
4~6月期についてもマイナス成長予測が多い
与謝野馨経済財政担当相は同日、「日本経済の反発力は十分強い」として、2011年度通年の成長率について「0より上、1%近いところにいくのでは」との見通しを語っていたが、24日の閣議後会見で「0.6、0.7%までは落ちる」と下方修正。シンクタンクからも「4~6月期については3四半期連続のマイナス成長は不可避。7~9月期にはようやくプラス成長に回帰すると思われるが、本格的な回復は年度下期以降にズレ込み、年度を通じての成長率は0%まで減速」(農林中金総合研究所)などの指摘が出た。
財務省が5月25日に発表した4月の貿易統計も先行きの厳しさを示唆するものだった。貿易収支が4637億円の大幅赤字になった。4月の赤字は1980年以来31年ぶり。大震災による減産で輸出が大きく落ち込んだためで、部品供給網(サプライチェーン)の復旧で輸出が回復傾向に入っても、福島第1原発事故を受けた代替燃料の輸入増などで貿易赤字基調は当面続き、「再び黒字に戻るのは秋以降」(第一生命経済研究所、ニッセイ基礎研究所)。貿易赤字はGDPの減少要因となり、日本経済の先行きは楽観できない状況が続くとの見方が広がった。
総務省が27日発表した4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)では、前年同月比0.6%上昇と2年4カ月ぶりにプラスに転じたが、景気回復によるデフレ脱却への動きと見る向きはほぼ皆無。国内需要は依然として低調な中で、原油など資源・食料価格の国際的な高騰が波及したものだとして、家計を一段と圧迫し、消費の回復をさらに遅らせる「悪い物価上昇」を印象付けた。
厚生労働省が31日発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)も前月比0.02ポイント低下して0.61倍と17カ月ぶりに悪化。総務省が同日発表した4月の完全失業率(季節調整値、岩手、宮城、福島3県を除く)も前月より0.1ポイントアップの4.7%と6カ月ぶりに上昇した。