全日本空輸が香港の投資会社と共同設立した格安航空会社(ロー・コスト・キャリアー=LCC)の社名が「ピーチアビエーション」と決まった。「peach」(桃)のロゴマークが入ったカラフルな機体が関西国際空港を拠点に、2012年3月から関空―福岡、関空―札幌(新千歳空港)、同5月から関空-韓国・ソウル(仁川空港)で就航する。
運賃は大手航空会社の半額程度というが、親会社の全日空との競合もあり、当面は早朝・深夜など観光客にターゲットを絞った実験的な運航となりそうで、ビジネスマンらの利用は限られることになりそうだ。
親会社と競合のドル箱路線には就航しない
国内のLCCが国際線の定期便に進出するのは初めて。国内の大手航空会社がLCCを設立するのも、もちろん初めてだ。しかし、航空関係者によると、今回のピーチアビエーションの設立は、経営難の関空に集客を図ることが大きな目的のひとつで、日本資本のLCCがアジアの先行LCCにどこまで対抗できるかを試す実験的な要素が多いという。
こう考えると、羽田でなく、関空がピーチアビエーションの拠点空港と位置付けられたのにも納得がいく。逆に言うと、当面は羽田-札幌など、全日空や日本航空がドル箱とする国内幹線に新参のピーチアビエーションが就航する可能性は極めて低い。言うまでもなく、羽田-札幌のような主要幹線に全日空が出資するLCCが就航すれば、「共食い」になり、ひいては日航の再建にも影響が出るからだ。
その点、関西では国内線の拠点としては伊丹空港(大阪国際空港)があり、関空の国内線の利便性は低い。このため、ピーチアビエーションが福岡、札幌に就航しても、ビジネス客が大挙して関空に流れることは考えにくい。まして運航が早朝・深夜に限られるのであれば、利用者は格安ツアーなどの観光客に事実上、制約されるというのが関係者の見方だ。
機内サービスは有料
一方、関空発着のLCCの国際線はオーストラリアのジェットスター航空、系列会社のジェットスター・アジア航空、フィリピンのセブ・パシフィック航空、韓国のエアプサン、済州航空の5社が豪州、シンガポール、マニラ、韓国などに就航。ピーチアビエーションがこれらのライバルにどこまで対抗できるか。価格、就航路線、サービスなどの点で大いに注目される。
ピーチアビエーションのロゴマークの桃は、アジアでは長寿や繁栄、幸福のシンボルという。当面はエアバスのA320―200型機(定員約180人)3機でスタート。5年目までに16機に増やし、年間600万人の利用を見込むという。同社は「365日低価格運賃」を掲げ、「客室乗務員はジーンズなどカジュアルウエアで、機内サービスは有料」という徹底したコスト削減で格安運賃を目指す。具体的な運賃は今後発表の予定で、今から注目される。