東京電力株はいったい、どこまで下がるのだろう――。2011年6月2日の東京株式市場で一時、前日比17円安の282円まで下落。4月6日に付けた取引時間中での上場来安値の292円をあっさり割り込んだ。
ところが、菅首相が退陣を表明すると株価は回復。午後には売りが一巡して買い戻しが優勢となり、結局この日は前日比6円高の305円で取引を終えた。
わずか1日のあいだで上下32円の幅で動いた東電株。小刻みな売買を繰り返して利益を得るデイトレーダーには「おいしい」が、長期保有している機関投資家や高齢者はヤキモキしているはずだ。
米格付け会社の引き下げが追い討ち
東電株は6月1日の終値が299円となり、終値で初めて300円を割った。11年3月期の決算発表のあった5月20日以降もじわじわと下がり、6月2日もその流れを受けて取引が始まった。
米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が東電債の格付けを投機的水準に引き下げたことが追い討ちとなり、投資家に嫌気が差したこともある。
九州電力などが債券発行による資金調達に前向きになりはじめたものの、投資家は東電の信用力の回復や、当面は資金繰りがむずかしいとみているようだ。
さらに、先に東電が支払う賠償金の支援策を決めた菅内閣が退陣を迫られるなど、政局が混迷の度合いを深めていることで「賠償支援策そのものに流動的な見方が広がっている」(証券アナリスト)との指摘もある。
こうしたことが東電株の「重荷」になった。
すでにマネーゲームの様相にある東電株だが、ある個人投資家は「迷わず買った。(国会が)解散していれば、まだ下がったはず」と話す。「売上げ5兆円、3000億円もの純利益を毎年出す企業なんてないですよ。しかも電力はいくら節電しても使わないわけにはいかないから収益は安定している。国有化や公的資金の話があるが、ここまで下がれば買いだと思いますよ。ゼロか、うまくいけば倍は儲かる」と、鼻息は荒い。