東日本大震災の直後に大規模なシステム障害を引き起こしたみずほ銀行と、その持ち株会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)に対して、金融庁は2011年5月31日に業務改善命令を出した。
その内容は、システム障害の再発防止策と改善計画の策定、システムリスクの総点検、顧客対応態勢の整備など。さらには「経営責任の明確化」を加え、6月末までに報告書を提出するよう求めている。
3人の特別顧問、旧3行のバランス人事の象徴
大規模なシステム障害を起こした経営責任について、みずほFGは5月23日に、みずほ銀行の西堀利頭取が6月20日付で退任すると発表。同時に、みずほFGの塚本隆史社長が会長になり、みずほ銀行の頭取に就き、みずほFGの社長にはみずほコーポレート銀行の佐藤康博頭取が就任する人事を決めた。
みずほは発足以来、旧第一勧業銀行と旧富士銀行、旧日本興業銀行の3行がトップを分けあってきた。3トップ制をやめて意思決定を一元化し、経営効率を高めることを打ち出している。
金融庁の業務改善命令が出される前に自らを律した形で、金融庁も「一定の評価はしている」という。
しかし、出された業務改善命令には「経営責任の明確化」や「グループ会社の管理態勢の強化・人事管理のあり方の見直し」、「責任の所在の明確化」といった経営陣には耳の痛い文言が並んでいて、金融庁としては「本当にそれで十分なのか」と突きつけた格好だ。
厳しい処分に、一部では、前田晃伸・みずほFG前社長と斎藤宏・みずほコーポレート銀行前頭取、杉山清次・みずほ銀行前頭取の3人の特別顧問が退任する方向で調整に入ったとの報道もある。
3人は、前田氏が旧富士銀、斎藤氏が旧興銀、杉山氏が旧第一勧銀の出身で、旧3行のバランス人事の象徴にみえる。旧3行のバランス人事を見直す方針である以上、特別顧問も例外ではないということらしい。
金融庁からの業務改善命令を受けて、みずほFGは「まだ検討していることはありません。改善計画については6月末までに発表します」と話している。
震災直後というタイミングも影響
銀行などの法令違反や不祥事のたびに業務改善命令を出してきた金融庁だが、「経営責任の明確化」や「責任の所在の明確化」にまで言及したケースはめずらしい。これまでは、2004年6月の旧UFJ銀行(現・三菱東京UFJ銀行)と、10年5月の日本振興銀行(10年9月に経営破たん)で起こった検査忌避の2件にとどまる。
みずほグループへの行政処分がこれまでに比べて厳しい印象もあるが、国際アナリストの枝川二郎氏は、「金融庁が事態を重くみたのは、震災直後のタイミングと、みずほ銀行というメガバンクであったことといえます。日本の金融インフラの中心にいる銀行がなにをやっているのか、ということです」とみている。
三菱UFJFGや三井住友FGに比べて、「自己資本など経営的な弱さがあることも確かなので、ここで厳しく対処して、この機に改善しなさいということなのでしょう」と、枝川氏は話している。