携帯電波に発がん性リスクとWHO報告 「販売中止しては」と孫社長皮肉る発言も

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   世界保健機関(WHO)の専門組織が、携帯電話の電磁波に発がん性の恐れがあると指摘した。5段階のリスク評価で、上から3番目に当たるという。

   今回の発表は日本にも衝撃を与えたが、「場外戦」も勃発した。経済学者の池田信夫氏がブログで「携帯は原発より危険」として、反原発で積極的に発言するソフトバンクの孫正義社長に向けて、「命を守ることが絶対の『正義』だと主張する孫氏は、携帯電話の販売を中止してはどうだろうか」と皮肉ったのだ。一方で池田氏への反発も多く、2人に対するネットの反応がヒートアップしている。

脳腫瘍引き起こす危険度「4割増」の報告も

電磁波が人体に及ぼす危険性に心配の声も
電磁波が人体に及ぼす危険性に心配の声も

   WHOの専門組織「国際がん研究機関(IARC)」は2011年5月31日、「無線の電磁波によるがん発症の可能性」に関する報告書を公表した。14か国・31人の専門家が5月24~31日、フランスのリヨンで行われたIARCの会議で、電磁波を直接浴びることによる発がん性のリスクに関するデータや文献を評価したうえでまとめたものだ。

   そこでは、携帯電話から出る電磁波により、「グリオーマ(神経膠腫)」と呼ばれる脳腫瘍を引き起こす危険度が増す恐れがあると指摘された。評価グループの委員長を務めた南カリフォルニア大学のジョナサン・サメット教授は、根拠となる各種データを検討した末、発がん性リスクの度合いが5段階中3番目の「2B」に相当するとして、携帯電話とがん発症の因果関係について今後も注意深く見ていくと語った。

   「2B」に分類されているものには、コーヒーや鉛などが含まれる。具体的にどれくらいリスクが高まるか数値では示されていないが、報告書では一例として、2004年までに実施された検査で、携帯電話を1日30分、10年以上続けて使用していたケースでは、グリオーマの危険度が40%増加したという結果を挙げている。

   過去にも海外の大学や研究機関で、携帯電話の電磁波と発がん性の関係を指摘するケースは見られたが、「危険性は限定的」としながらもWHOの組織が公の形で認めたのは初めてだ。

   国内では、NTTドコモやソフトバンクモバイル(SBM)など通信大手がウェブサイト上で、電波の人体に与える影響についての見解や情報提供を行っている。総務省では1997年から「生体電磁環境研究推進委員会」を開催し、2007年に最終報告書をまとめた。そこでは、電波を長期間浴びたことが脳腫瘍の発生に及ぼす影響は認められないとの結論を出している。しかし委員会はその後、「検討会」に引き継がれた。総務省電波環境課に、今回のIARCの発表内容に関する対応を尋ねると、「検討会で引き続き注視していく」と回答した。

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