上場を優先するなら統合はいったん白紙
とはいえ、協議が全く止まっているわけではない。複数の関係者によれば、両社長が震災後に少なくとも1度は直接会ったほか、事務レベルの会合も複数回あった。
問題は東証がなお上場へのこだわりを失っていない点だ。東証は2001年に株式会社化した時から上場が課題で、「2011年3月期に3期ぶりの最終黒字化を果たした今がその時期」(東証幹部)との思いは強い。東証は時価総額が数千億円とも見られ、中小証券など110社の株主も早期上場を求め続けている。しかし「統合を前提にした上場は株価算定上からしてもあり得ない」(大証関係者)との見方が一般的。つまり、上場を優先するなら統合はいったん白紙にしなければならないという理屈だ。
実は斉藤社長は統合構想が発覚した3月10日の段階では記者団に「(統合の前に)上場が先」と明言し、その後上場についてトーンダウンしている。どうやら斉藤社長はよく状況をつかんでおらず、内部で調整を進めないままそう発言したようだ。
もし斉藤社長が統合を優先(上場は断念)するなら、中小証券などの株主を納得させる必要がある。また、上場会社の大証が存続会社になり、主導権を握られかねないことについても東証内部を説得する必要がある。この6月で社長就任丸4年となり、レイムダック化しつつある野村証券副社長出身の斉藤社長にその力量があるかが問われているというのが、東証大証統合協議のポイントだ。