東京電力の福島第1発電所の事故や中部電力の浜岡原発の停止で電力需給が逼迫するなか、2011年の夏については、電力の確保ができる見通しになった。だが、現時点で定期検査中の原発は再開が困難なことに加えて、これから定期検査に入る原発も多い。全54基が停止した場合、約4900万キロワットの出力が消えることになる。12年以降、「原発ゼロ」で夏を乗り切れるのか。
日本全国に原発は17箇所、54基ある。だが、そのうち東北電力の女川原発、東京電力の福島第1原発、福島第2原発、東海第2原発の計14基が東日本大震災で使用できない状態になっている。その上、中部電力の浜岡原発が4号機、5号機が政府の要請で運転を停止。また、19基が定期検査中で、現時点で運転中なのは、試験運転中のものを含めると19基にとどまっている。全54基を動かした場合、約4900万キロワットの出力が得られるが、現状の19基から得られるのは、約4割弱の約1750万キロワットに過ぎない。
定期検査中の原発いずれも運転再開の見通し立たず
それでも、11年の夏については、乗り切ることができる見通しだ。東京電力は5月13日、11年夏の供給力を5620万キロワット(8月末)に上方修正し、浜岡原発を停止した中部電力も、11年夏には計画停電を行わないことを発表。これまで動かしていなかった火力発電所を再起動したことなどが理由だ。東電・中電の両社は、11年5月30日にも、浜岡原発が立地している静岡県に対して、夏場の電力確保のめどが付いていることを説明している。
だが、原発への依存度が高い関西電力や九州電力は、いまだに「綱渡り状態」が続いている。特に九電では、玄海原発2、3号機の定期点検が3~4月には完了する予定だったが、震災の影響で再開できない状態が続いている。需要が伸びる6月~7月上旬には運転再開を目指したい考えだが、政府の説明が不十分なことなどを理由に、古川康知事などは難色を示したままだ。定期検査中の原発は玄海原発を含めて19基あるが、いずれも運転再開の見通しは立っていない。
現在稼働している19基も次々定期点検
現在運転中の原子炉についても課題がある。関西電力の美浜原発をかかえる福井県美浜町の議会では2号機の停止を求める意見が出ているほか、九電の玄海原発1号機については、「脆化」と呼ばれる老朽化現象が、従来の想定を超えて進行していることが明らかになっている。運転停止を求める声が高まるのは必至だ。
さらに、現在正常に稼働している原子炉も、定期点検が必要だ。
例えば、震災直前の11年2月から4回目の定期検査に入っている東北電力の東通原発1号機の場合、前回3回目の定期検査は09年9月12日から10年1月17日、2回目は08年3月22日から8月13日にかけて行われている。東通原発1号機は05年12月に運転を始めたばかりで比較的新しいが、検査と検査の間の通常運転期間は、せいぜい1年強に過ぎないのが実情だ。
現在稼働している19基の原子炉のうち、10年6月下旬に点検を終えた関電の大飯4号機、高浜4号機は、11年7月下旬にも再び点検入りすることになっている。試験運転中の北電・泊2号機と関電・大飯1号機を除くと、最も点検終了から日が浅いのは東電・柏崎刈羽原発6号機(11年3月9日点検終了)。12年春~夏には再び点検入りする見通しだ。「一度止めたら、再び動かすのは困難」となっている現状が続けば、12年夏には「原発全停止」という事態も考えられ、さらに厳しい節電を迫られる可能性もある。